ヘア&メイクアップアーティスト 藤原美智子のスペシャルメッセージ「メイクが教えてくれたこと」
前回(
藤原美智子さんが次なるステージへ。42年間変わらぬ「女性たちを輝かせたい」という思い)より引き続き、藤原美智子さんのロングインタビューをお届けします。
透明感と品性。藤原さんが女性の美を表現するうえで、変わることなく大切にしてきたこと。細かな創意工夫を重ねていくことが、結果、大人の品性を演出することにつながっていくのだという。藤原美智子(ふじわら・みちこ)長年にわたり雑誌や広告のヘア&メイク、そしてテレビ出演や執筆活動を通じ、常に日本のヘア&メイク業界を牽引。今後は、ビューティ・ライフスタイルデザイナーとして活動。さらに幅を広げて、美容や健康、暮らしや生き方まで、ライフスタイル全般の発信を続ける。その人らしい美を創るのは、「意識する経験値」
アーティスト人生を振り返ると、印象的な出来事は数えきれないと、藤原さん。なかでも、忘れられないというひとつのエピソードを教えてくれました。
「以前、一般の女性たちをモデルに、メイクのレッスンをするというテレビ番組に出演していたことがあったんですね。それからかなり年月が経って、地方に講演に行ったとき、最後まで私を待ってお花を届けてくださった女性がいて......。すると、『実は私、以前、テレビ番組で藤原さんにメイクをしていただいた者なんです』。思わず、はっとさせられるくらい、きらきらと光を放っていたので、とてもきれいですねと褒めると『はい、教わったとおりに練習しました』って。私が教えたメイクをちゃんと自分のものにしていたんです。ああ、大人はこうして“知性”できれいになるんだ、それが大人ならではの醍醐味なんだと教えられた気がして、思わずじんときました」
年齢とともにシワが増えたりたるみが生じたりと、老化のサインが現れるのは致し方ないこと。失われるものがある半面、「大人になるほどに、知性という強みが養われる」と藤原さん。そう、この女性のように。
「大人の“きれい”は、知性がないと育たないと、私は思います。知性が、選び取る目につながる、使いこなす技につながる。そして、知性とは、すなわち経験値。だから、大人のほうがきれいになれると思うんですよね。たとえば、『もうちょっと幅を狭くアイシャドウを入れたほうがいいみたい』とか、『口紅を塗ったけれど、主張が強すぎたから、リップラインをティッシュオフしてみよう』とか『眉を描いたら、少しきつい印象になったから、ブラシでぼかそう』とか。
それが周りからは気づかれないような微々たる差であっても、自分の場合は、こうしたらこうなったというふうに、意識して自分らしさを探すことが大切だと思うんです。意識しないと自分らしさは摑めない。私はメイクの提案をするたび、流行よりもむしろ、その人らしさを重視していました。皆がいいといったからといって、流行の色を選んだからといって、有名ブランドのアイテムを使ったからといって、ただ無意識に塗るだけでは、決してきれいになれない。きれいになりたいという欲求は、いつまで経っても満たされない気がして......。大人を美しくするのは、『意識する経験値』にほかならないと思います」