藤原さんの記憶に残る仕事「フィンガーウェーブが誕生した1920年代風メイク」。2017年発刊の黒木 瞳さんの写真集『Timeless』から。「大人の潔さを色ではなく、ラインで表現。黒木さんは年齢を重ねるほどにピュアになっていく稀有な人」。撮影/下村一喜成長できる自分の発見から未来と自由が始まる
「明日のほうが、できることがあるかもしれない。そう思えれば、過去にしがみつく必要がなくなります」── 藤原さん
アーティストとしての今までに終止符を打つことは、すなわち、自分らしい自由の始まり、明るい未来の始まり。
藤原さんの潔く鮮やかな決断は、誰でも、いくつからでも自分次第で新しい人生を始められる、新しい景色を探せると、教えてくれます。
「過去にしがみついたら、どんどん自信を失うばかりのような気がするの。だって、しがみつくって何かの“後ろ”だもの。どうしたって、前向きにはならないでしょう? 思いきって手放せば、あれっ、いらなかったんだと、きっと気づくはず。もちろん、今は気づけないかもしれない、気づくのはもっともっと先かもしれないけれど......、でも、どんな過去も、その意味づけは未来が決める。私はそう思います」
未来を創るのは、自分。どきりとさせられた人も多いはず。
「私、還暦でバレエを始めたんです。子どもの頃に習いたいと思いながら叶わず、ずっと気にかかっていて。そうだ、今やらないで、いつやるの!?と。別にバレリーナになりたいわけじゃなくて(笑)、ただただ自分が集中できて、とても楽しいの。そういえば、ヘア&メイクも、集中できて楽しいと感じていたのかもしれない。
脚が広がるようになったとか、きちんと立てるようになったとか、昨日できなかったことが今日できるようになって、自分の成長を感じられるんです。この年齢で、成長できるなんて!と、新しい自分を発見した思い。メイクという小道具は置いたけれど、これからは目に見えるものではなく、私自身の暮らしや生き方を通じて、大人の女性たちの背中を押したいと思う。今、もう一度原点に戻った、そんな感覚です」
「大人の美しさにはリニューアルが必要。創意工夫を重ねて、更新していきましょう」── 藤原さん
そして、藤原さんから、ヘア&メイクアップアーティストとしての、メッセージ。
「常に自分をリニューアルしてほしいと思います。たとえば、アイラインひとつとっても、年齢を重ねるにしたがって、そのときどきで、似合う太さも長さも変わるんです。太すぎると目が小さく見えるとか、少し長めにしたほうが目の横幅が増して見えるとか。そういった創意工夫を重ね続けることが大事。だから今こそ、メイクを。すると、自ずと大人のきれいが育っていくと思います」