チャヴォリック Ciavolich
オーナーのキアラ・チャヴォリックさん。遠くに見える山並みはマイエッラ山塊。ギリシャ神話の女神が横たわる姿になぞらえて、土地の人々からは“スリーピング・ビューティ”と呼ばれています。先祖伝来の土地に根差した、独自のワイン造りに勤しむ女性オーナー
地理的にはイタリアの中部に位置するアブルッツォですが、文化的・経済的には南部に属するといわれています。農業が盛んで、その農産物を北イタリアに販売して収入を得るという仕組みもその一例。現在も、アルコール度数の高いワインやワイン用のブドウを北イタリアに売る生産者は少なくありません。ワイナリー「チャヴォリック」も、現在のオーナー、キアラ・チャヴォリックさんが、父の後を継ぐまでは量り売りワインを北部に販売していました。
チャヴォリックという名前は、祖先がブルガリア人だったことに由来。500年近い歴史をもつ、由緒ある家系です。法学部を卒業したキアラさんは弁護士になるつもりでしたが、突然、父親が病に倒れ、悩んだ末に家業を継ぐことを決意。「当時のブドウ畑は寄生虫の被害を受け、さらにワイナリーを任せていた人物にすべてを持ち逃げされ、何もかも立て直さなければなりませんでした」とキアラさん。まず、45haあった畑を35haに減らし、量り売りをやめてボトルワインに切り替え、クオリティワインの生産に乗り出したのでした。
ワイナリーを案内するキアラさん。土壌やこだわりのワイン造りについて熱心に語ります。チャヴォリック家の祖先はブルガリアの羊毛を扱う商人でした。サラセン人に追われ、1560年頃に現在のアブルッツォ州キエーティ県ミリアニコに移住。以来、この地に根を下ろし、19世紀半ばに醸造施設を設け、本格的にワイン造りを始めました。
19世紀終わりに貴族の女性がチャヴォリック家に嫁ぎ、1960年代にその夫人の遺産としてミリアニコよりも内陸で、優れたアブルッツォワインの産地として知られるロレート・アプルティーノという土地を相続。キアラさんの父ジュゼッペ氏がモンテプルチアーノ種などのブドウ栽培を始めました。その時に植えたブドウの樹齢は60年近く。今もなお現役で、チャヴォリックのワイン造りに使われています。
アンフォラと呼ばれるテラコッタ製の醸造タンク。アンフォラを使った醸造・熟成は古代ローマ時代に遡る伝統的な手法。自然派ワインの造り手の間でよく用いられます。「この土地は氷河が運んできた石灰岩と火山岩を含んだ粘土質で、ミネラルがブドウに複雑味を与え、さらに、保水力が高いので干ばつに強いのです。また、晴天が多くイタリアで最も太陽の恵みを享受する土地のひとつという点も、ブドウの生育に適しています」
テイスティングをしたマッセリア（農家や農園の意味。ここではゲストを迎える場所）のテラス。ブドウ畑越しに、遠くマイエッラ山塊の絶景が見渡せます。ワインの醸造については、伝統的なテラコッタ製のアンフォラ（壷）やセメント槽、またはステレンスタンクをワインのタイプに応じて使い分けます。また、発酵に必要な酵母は、同じブドウから発生した自然酵母を使うことを基本とし、ブドウ本来の性質を最大限に引き出します。
プレミアムワイン「フォッソ・カンチェッリ」の白ワイン、ペコリーノとトレッビアーノ・ダブルッツォ（左2本）、ロゼのチェラスオーロ・ダブルッツォ（中央）、赤のモンテプルチアーノ・ダブルッツォ（右から2番目）。キアラさんがワイナリーを引き継いで5年を迎える頃には、さらに現在の醸造施設を建て、プレミアムワイン「フォッソ・カンチェッリ」シリーズの醸造にも着手。ブドウの出来の良い年にのみ仕込むスタイルで、これまでに2007年、08年、15年、17年のものがリリースされました。ワイン専門誌などで非常に高い評価を受け、アブルッツォを代表するワインのひとつとして注目を集めています。
1800年代の農家を改装したゲストハウス。全６室はすべて、アンティーク家具を中心に、現代的なエッセンスをちりばめたインテリア。さらに、ワインを訪ねる旅をしたい人のために、マッセリア（農家）を改装した宿泊施設も用意。地元産のチーズやヨーグルトをたっぷり味わえる朝食、ハムやサラミなどとワインを楽しむアペリティーヴォなど、アブルッツォの魅力あふれるホスピタリティを堪能できます。
チャヴォリック Ciavolichhttps://www.ciavolich.com/C.da Salmacina, 11 Loreto Aprutino (PE) Italy
TEL. +39-085-8289002
