ミュージカルの極意「珠玉のエンターテインメントに挑む」
僕がこれまでに観たミュージカルで素敵な作品はたくさんありましたが、主に影響を受けた作品は『ピピン』と『ディア・エヴァン・ハンセン』です。後者は映画でしたが、曲にもストーリーにも魅了され、冒頭から号泣でした。生の舞台で観たかったです。
『ピピン』と出会ったのは初演時に公演を紹介していたCMでした。当時ミュージカルの『ウエスト・サイド・ストーリー』の出演が決まっていて、ミュージカルを知るいい機会だと思い、自分でチケットを買って観に行きました。
こんな素晴らしい作品をどうして僕は知らなかったのかと衝撃を受けたんです。作品のエンターテインメント性に心を全部持って行かれました。
特に感動したのは子役の子がアカペラで歌う場面。途中から入ってくるピアノの伴奏の最初の音にぶれることなく合わせているのが印象的でした。
ピピンは現状に満足できずに“本当の幸せとは何か”と自分に問いかけ、特別な何かを探し求めていきます。そこに僕自身という人間に近いものがあると感じています。
僕らの仕事は作品と出会って、刺激をもらって、終わると空白の心境になって、また次の作品と出会う。常に次を探して生きていると思うんです。この役者としての僕がピピンにも通じるところがあるんです。
僕がミュージカルに感じる難しさは、歌うときに感情だけが先行してはダメだということ。『ジェイミー』を演じたときに感じましたが、感情が先走るとコントロールがしづらくて、歌いにくいんです。それが一つの課題ですね。
『ピピン』では「コーナー・オブ・ザ・スカイ」などの難しい楽曲をシングルで歌うので、1日に2公演あるときの体力の維持や喉の使い方はもっと勉強しなければと思っています。
森崎ウィン(もりさき・うぃん)
1990年生まれ、ミャンマー出身。小学4年生のときに来日し、中学2年生から芸能活動を開始。2018年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』の主要キャストに抜擢されハリウッドデビューを果たしたことで話題を呼んだ。2020年『ウエスト・サイド・ストーリー season2』のトニー役をはじめ、その確かな演技力と歌唱力でミュージカル作品でも活躍。音楽のソロ活動も行っている。
ミュージカル『ピピン』
1972年に初演され2013年にリバイバル版としてダイアン・パウルスが新演出を手がけ、そのクリエイティブチームによって2019年に日本版として上演された作品。
オリジナルで振り付けをしたボブ・フォッシーのスタイルを新演出ではチェット・ウォーカーが忠実に再現。シルク・ドゥ・ソレイユ出身のアーティストがサーカス・アクロバットを大胆に取り入れ、圧巻のパフォーマンスが満載。舞台セットはブロードウェイやナショナル・ツアーと同じデザインが使用される。
出演者は森崎ウィン、クリスタル・ケイほか。
東急シアターオーブ2022年8月30日~9月19日
S席1万4000円(全席指定)ほか
キョードー東京:0570-550-799
URL:
https://www.pippin2022.jp/※大阪公演あり
表示価格はすべて税込みです。
撮影/岡積千可 構成・文/山下シオン ヘア&メイク/KEIKO スタイリング/森田晃嘉
『家庭画報』2022年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。