「風の谷のナウシカ 上の巻─白き魔女の戦記─」
右はクシャナ役の尾上菊之助さん。「前回はナウシカを演じましたが、歌舞伎の古典作品は再演でキャストを変えて作品を深めていくことがありますので、今回は米吉さんの心でナウシカを演じていただきます」。左はナウシカ役の中村米吉さん。「初演で菊之助のお兄さんがなさった歌舞伎のナウシカと対面しているので、目指すべき目標だと思っています。その上で僕のエッセンスをふりかけて僕らしさを出したいです」。写真提供/松竹新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』が新橋演舞場で初演されたのは2019年12月。歌舞伎座初登場となる2022年7月の第三部では皇女クシャナに焦点を当てた「白き魔女の戦記」が上の巻として上演される。尾上菊之助さんが再演に際してその想いを語った。
「宮崎 駿先生が1982年から13年もの歳月をかけて完成させた原作漫画『風の谷のナウシカ』には、令和の世の中を見透かしていたのではないかというくらい今の状況に当てはまっている世界観が描かれています。ナウシカは序幕で自分の心の闇に気づき、その闇を抱えつつも善で覆って、それを愛で包んでいきます。物語が進んでいくと同時に彼女自身も成長していきますし、彼女にかかわる人間はその心に打たれて、自分の真善美にも気づいていきます。これは歌舞伎でいう“モドリ”だと思います。
今回は生い立ちも含めたクシャナの心情を深く描くことができればと思います。2幕で上演する予定で、ナウシカが登場する“腐海”の場面の評判がよかったので、歌舞伎座の横長の舞台の特性をダイナミックに生かしたいと考えています。衣裳と鬘も前回を大事にしつつ、ビジュアルは少し変えて和のテイストをプラスした私ならではのクシャナを演じさせていただきます」
そしてナウシカを演じる中村米吉さんにはどんな期待を抱いているのか。
「前回はケチャを演じてくださいまして、とても役作りも熱心に細かく取り組んでいて、情熱を感じておりました。彼の体から発している清らかさというか、煌めくものを私は感じて、それがナウシカとリンクした感じがしています。メイクも試行錯誤されていて、楽屋でナウシカのメイクをされて、その写真を携帯に送ってくれるんです。顔の色の薄さや濃さも毎回違いますし、アイラインやぼかしの入れ方も工夫されています。それが非常に嬉しくて、熱心に役に向き合っていただいているなと感じています」
今月の歌舞伎
【歌舞伎座】
七月大歌舞伎
~2022年7月29日(20日は休演)
●第一部 11時開演三代猿之助四十八撰の内 通し狂言『當世流小栗判官』
●第二部 14時40分開演一、『夏祭浪花鑑』 二、新歌舞伎十八番の内『雪月花三景 仲国』
●第三部 18時30分開演『風の谷のナウシカ 上の巻―白き魔女の戦記―』
1等席1万6000円ほか
チケットホン松竹:0570-000-489
公演の詳細は歌舞伎公式総合サイトをご参照ください。
歌舞伎美人
https://www.kabuki-bito.jp
【大阪松竹座】
七月大歌舞伎
© 松竹昼の部は近松門左衛門による「しゃべり」と呼ばれる女方の一人語りが眼目の義太夫狂言『八重桐廓噺』、井上ひさしの直木賞作品『手鎖心中』を歌舞伎化した作品、夜の部は夫婦愛を描いた近松門左衛門の世話物『堀川波の鼓』と祇園祭を背景に恋模様や早替わりの趣向が楽しめる『祇園恋づくし』が上演される。出演は片岡仁左衛門、中村鴈治郎、中村扇雀、片岡孝太郎、松本幸四郎、中村勘九郎、中村七之助ほか。
~2022年7月24日
●昼の部 12時開演一、『八重桐廓噺 嫗山姥』 二、『浮かれ心中』
●夜の部 16時30分開演一、『堀川波の鼓』 二、『祇園恋づくし』
1等席1万7000円ほか
チケットホン松竹 :0570-000-489
表示価格はすべて税込みです。
構成・文/山下シオン
『家庭画報』2022年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。