更年期の症状/メンタルの不調
不眠、イライラ、うつ、思考力低下。更年期は心も脳も不安定
天野惠子(あまの・けいこ)先生静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。更年期症状には精神的な不調も多い
「更年期のメンタル症状は、“正しい知識と漢方薬”で落ち着くことが多いのです」── 天野惠子先生
更年期には、不眠、イライラ、うつ症状、もの忘れ、集中力や判断力の低下などメンタルの不調を感じることも多くなります。人によっては目立った身体症状はなく、主に精神神経症状が強く出る場合も珍しくありません。
それらの多くは女性ホルモン・エストロゲンの減少が原因で、時期が過ぎれば治まるのですが、更年期と結びつけてとらえられず、「認知症の始まりでは?」「うつ病だろうか」と悩む女性が多いのも現状です。
そのような患者さんに、更年期のホルモンの変化が心身にどのような影響を与えるかをきちんと説明すると、安心され、診察室に入ってきたときとは見違えるほど表情が明るくなります。
更年期を正しく知ることが心の安定にいかに必要であるかがわかります。
柔軟な考え方と、周囲の理解が症状を軽減
更年期は家庭や職場など社会の中で重要な役割を担い、周囲から頼りにされる年代です。
メンタルの不調を訴える患者さんと接していると、弱みを見せず頑張って周囲の期待に応えることに存在価値を見出し、心身に大きな負担を抱えている女性が多いように思います。
体が変化する更年期を機会に、考え方も柔軟に変えてみてはいかがでしょうか。
そして重要なのは社会や家族の理解とサポート。大変さを訴え助けを求められる環境と、「いつもありがとう。無理しないで休んで」の言葉が、症状を半減させるといっても過言ではないのです。
次回は、更年期に生じるさまざまなメンタル症状について詳しくご紹介していきます。
*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。
URL:
http://www.nahw.or.jp/hospital-info*「女性外来オンライン」(天野惠子先生主宰)では、天野先生ご自身が厳選した女性の健康の回復や維持に役立つ信頼性の高い情報を発信しています。
公式サイト「女性外来オンライン」:
https://joseigairai.online/YouTube
「女性外来オンラインチャンネル」はこちら>> 撮影/鍋島徳恭 取材・文/浅原須美
『家庭画報』2022年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。