365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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八重咲きのスイフヨウは、開花したときは白花で徐々にピンクがかってきます。終わった花がらは全体が濃いピンクになるので、朝見ると1本の木に白と濃いピンクが存在しています。■属科・タイプ:アオイ科の落葉低木
■花期:8月〜10月
花色が変化するスイフヨウにとくにご注目を!
マンションのエントランスにフヨウの木があるので、私はこの時期、散歩に出かけなくても毎日優雅なピンクの花を楽しむことができます。ホリホックやムクゲなど、アオイ科には暑さの中でも大きな花を咲かせる種類が多くありますが、なかでも「ふんわり」という形容詞がいちばん似合うのはフヨウではないかと思います。
8月上旬から咲き始めるので夏の花木として認識されていますが、花が満開になるのは9月の上旬から中旬で、10月まで咲き続けます。近縁種のムクゲもフヨウとよく似た花を咲かせますが、こちらは開花が少し早く7月から咲き始め、9月までが花期。ちょうどこの時季に花散歩に出かければ、フヨウとムクゲの両方が見られます。
フヨウの日本における栽培の歴史は長く、中国から伝わり、室町時代にはすでに観賞されていた記録が残っているそうです。全国のフヨウの名所を調べてみるとお寺や神社が多いのも、古くから親しまれてきた証しではないかと思います。
さて、フヨウの中にとてもおもしろい品種があります。フヨウの変種のスイフヨウ、漢字で書くと酔芙蓉です。ボリューム感のある八重咲きの花は、朝の咲き始めは白く、徐々にピンクがさしてきて、夕方には濃淡ピンクの花色に。その花色の変化をお酒を飲んで顔が赤くなるさまにたとえるなんて、なかなかしゃれていると思ったら、日本の植物学の父といわれる牧野富太郎博士が名づけの親でした。
フヨウは一日花で、翌朝にしぼんだ花を見ると濃いピンクに染まっています。もしスイフヨウを近所で見つけたら、時間帯を変えて何度か観察しに行ってみてください。
一般的なフヨウは一重の大輪。ふんわりと咲く姿はとても優雅で、染めたような花色はピンクでも涼しげな雰囲気があります。栽培の難易度
半耐寒性のため、関東地方以西の温暖地・暖地なら冬越しできます。寒冷地では冬に地上部が枯れるので、マルチングで防寒して根を保護する必要があります。夏〜秋の開花期の乾燥を嫌うので、乾きやすい土壌では腐葉土を多めに入れておくのがおすすめ。7月〜9月を除けばいつ加えてもかまいません。剪定は落葉期の11月〜翌年3月に行います。枯れた枝や込みすぎた枝を基部から切ります。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。