花ウメの妖艶な魅力をしみじみと観賞
世界に誇れる日本のサクラをこよなく愛する一方で、私の心はどうしてもウメに惹かれてしまうのです。清楚で上品で優しいサクラに対し、花ウメはあでやかで、どこか妖艶な魅力があります。花心のしべが長くくっきりしているところなど、つけまつげで目元ぱっちりの女性のようで、日本らしさとは異なるエキゾチックさがあり、それが妖艶に見えるのかもしれません。
ウメは中国原産の花木で、朝鮮半島を経由して日本に渡来したといわれています。『万葉集』には100種を超えるウメの句があることから、万葉の時代にはすでに広く普及されていたと推測されています。ウメを見るたびに、万葉の人々もこのあでやかな美しさに魅了されていたんだ、と遠い昔に思いを馳せ、楽しい気持ちになります。
中国から渡来後、日本で品種改良が盛んに行われたウメは、現在300種以上にも及ぶといわれています。実を採取するために改良されたものを実ウメ、花を観賞するために改良されたものを花ウメと呼びます。
羽根木公園では花ウメを中心に、紅梅約270本、白梅約380本を観賞することができます。ふんわりと木全体を覆うように咲くサクラと違い、花ウメは花が一つずつ、並ぶように枝について咲きます。品種によってかなり個性に差があるので、1種ずつ、花1輪ずつをしみじみと眺めるのがおすすめの観賞法です。
白梅を代表する品種‘白加賀’。実ウメでありながら花も観賞価値が高く古くから親しまれている。花びらの白とがく片の赤が混じり合う花姿が愛らしい。撮影/横田秀樹アンズとの交配品種の豊後系・杏性に分類される品種。うっすらとピンクに色づく花色と、くっきりした丸形の花がとてもラブリー。撮影/横田秀樹緋梅系・紅梅性の品種‘紅千鳥’。花弁の内側に立ち上がる小さな花びらがあるのが特徴で、これは雄しべが変化して旗弁(きべん)となったもの。鮮やかな紅色には、着物の襦袢のような妖艶な魅力がある。撮影/横田秀樹野梅系の枝垂れ品種‘呉羽枝垂れ’。この愛らしい桃色の八重咲きが枝垂れる枝に並び咲く景色は本当に美しく、なかなか立ち去れないほど魅力的。撮影/横田秀樹豊後系・豊後性には少ない枝垂れ品種の‘藤牡丹’。淡いピンク色が上品で、つぼみの赤紫色も美しい。撮影/横田秀樹