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人格の変化や非常識な行動も。働き盛りに発症することが多い「前頭側頭型認知症」とは?

2022.08.05

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残存力と症状の特徴を生かし、「問題のない習慣」に変える


残念ながら前頭側頭型認知症に対する有効な治療法は開発されておらず、対症療法が中心となります。

父は認知症の種類に限らず、その人に残された能力に目を向け、できることを生かしていく大切さを説いており、前頭側頭型認知症のケアにおいても同様の取り組みが行われています。

このタイプの認知症はアルツハイマー型認知症に比べて、見当識(時間・場所・人の認識)や体験記憶(エピソード記憶)、習慣的動作(手続き記憶)、視空間認知力が比較的保たれており、多くの作業を行うことが可能です。


このような本人に残された能力に着目し、なおかつこの認知症の特徴(同じことを繰り返す、決まった行動をするなど)を利用して「困った習慣」を「問題のない習慣」に変えてルーチン化する作業療法的アプローチが試みられています。

以前とはまるで違う姿を見るのはやりきれないものです。しかし、残された能力に目を向けてできることを生かすことで症状が緩和され、本人も前向きに生きていける可能性が大きいのです。──和夫さん


長谷川和夫先生講演

和夫さんは、認知症介護においてパーソン・センタード・ケアの考え方を重視し、その人に残されている能力を大事にすることを訴え続けた。写真提供/長谷川 洋さん

一方で、前頭側頭型認知症になるとその人らしさが失われ、自己中心的な行動も多くなり、その対応は難しいといわれます。洋さんも「家族の介護負担は大きく、自分たちだけで抱え込むと苦しくなる」と話します。

専門医に相談しながらデイケアなどの介護サービスを利用し、十分なサポートを受けることが必要です。同時に家族会などを通して同じ境遇の人とつながり、何でも話せて介護の苦労を共感し合える仲間を作っておくことも大切です。認知症の介護経験のある人が相談に乗ってくれる電話相談窓口を設置する自治体もありますので、問い合わせてみるのもよいでしょう。

また、前頭側頭型認知症に限らず、家族が認知症についてよく理解することが重要だといわれています。学ぶことによって家族が病気を受け入れ、接し方が寛容になると本人の精神状態が安定するため、困った行動の減少にもつながり、介護の負担も軽減されます。
撮影/八田政玄 取材・文/渡辺千鶴

『家庭画報』2022年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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