女性ホルモンに働きかける スパイスの香りで健やかに 第2回(全9回) スパイスには漢方薬に使われるものも多く、古よりその健康効果が期待されてきました。近年の研究から、スパイスの香りが脳の視床下部に作用し、女性ホルモンを増やすこともわかっています。この夏は更年期のゆらぎを乗り越える健康アイテムとしての魅力に注目してみましょう。
前回の記事はこちら>> 更年期のゆらぎを整えるおすすめスパイス7
スパイスの香りを引き出すテクニックは下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します>>スパイスの香気成分の中には、脳に作用したり温度受容体を刺激したりして更年期の諸症状を緩和してくれる、嬉しい働きがあることがわかっています。そこで、篠原先生の知見をもとに更年期世代におすすめのスパイスを厳選しました。
エストロゲンを増加させる
左から八角、カルダモン、サフラン●サフランサフランに含まれる香気成分の「サフラナール」が脳の視床下部を刺激し、女性ホルモンのエストロゲンの分泌を促す。古来より婦人病の特効薬として重用されてきた。
●カルダモンカルダモンに含まれる香気成分の「1.8-シネオール」が脳の視床下部を刺激し、女性ホルモンのエストロゲンの分泌を高めるほか、清涼な香りが気分を落ち着かせてくれる。
●八角八角に含まれる香気成分の「アネトール」が女性ホルモンのエストロゲンと似た作用を持ち、更年期障害の予防や改善に役立つ。
エストロゲン・テストステロンを増加させる
●黒こしょう黒こしょうに含まれる香気成分の「β-カリオフィレン」が脳の視床下部を刺激し、女性ホルモンのエストロゲンと男性ホルモンのテストステロンの分泌を高める。テストステロンが増加することで、筋肉や骨の質の向上、生活習慣病の予防、リーダーシップの発揮、好奇心や競争心の維持といった効果が期待できる。
温度受容体を刺激して血行をよくする
左からクローブ、唐辛子、しょうが●しょうがしょうがに含まれる辛味成分の「ショウガオール」は温度受容体を刺激し、43度以上の温度を感知するTRPV1(トリップ・ブイワン)を活性化させる。血管が拡張し血液の循環がよくなり、冷えの改善、肩こり・腰痛の緩和などに役立つ。
●唐辛子唐辛子に含まれる辛味成分の「カプサイシン」は、温度受容体を刺激し、TRPV1(トリップ・ブイワン)を活性化させる。それにより温感が高まり、代謝が活発に。血行もよくなり、発汗作用によって自律神経のバランスが整う作用もある。
●クローブクローブに含まれる香気成分の「オイゲノール」は温度受容体を刺激し、32~39度以上の温度を感知するTRPV3(トリップ・ブイスリー)を活性化させるため、温感が高まる。血液の循環がよくなり、疲労回復、肌荒れの改善にもつながる。
長崎大学医学部 生理学第二講座 教授
篠原一之(しのはら・かずゆき)先生1984年長崎大学医学部卒業。専門は脳科学、内分泌、心療内科。女性ホルモンのバランスの崩れによる心身の不調を香りで緩和する研究・商品開発に取り組むとともに、香りを用いた女性の健康法を提案する。 〔特集〕女性ホルモンに働きかける スパイスの香りで健やかに(全9回)
撮影/鍋島徳恭 スタイリング/阿部美恵 取材・文/渡辺千鶴
『家庭画報』2022年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。