365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> ワレモコウ
ごく細い茎の先端に花をつけるワレモコウ。じつは花ではなく萼(がく)が集まったもので、色が長く残ります。■属科・タイプ:バラ科の宿根草
■花期:6月〜10月
■草丈:50〜180cm
赤やかわいらしいピンクもあります
初秋に茎の先端に少し赤みがかった濃い茶色の穂状花序をつけるワレモコウは、日本では古くから親しまれ、代表的な茶花として知られます。華やかな色の花が多い中で、地味ともいえるシックな花色は、詫び寂びという日本人の美意識にかなうものであったのだと思います。草原などで華奢な草姿を風に揺らしているのを見ると、秋らしい風情を感じたりもします。
ワレモコウに和の趣を感じていたので、イギリスのガーデンでワレモコウが他の花と上手に組み合わせられて咲いていたのを初めてみたときは意外に思いました。花穂が赤みがかっているものの、どう見てもワレモコウ。ガーデナーさんに尋ねたところ、‘タンナ’という品種でした。
ワレモコウの学名はサンギルソバ・オフィシナリス。日本も原産地の一つですが、朝鮮半島、中国、シベリア、ヨーロッパ、北米大陸ととても広い範囲に及び、イギリスのガーデンで咲いていてもなんの不思議もないのです。最近では日本のイングリッシュガーデンなどでも、植栽の中に取り込んだデザインをしているところが増えています。草原などで自然に咲くのとはまた異なる、しゃれた雰囲気がとても魅力的で、ワレモコウ素敵だな、とあらためて感じています。
ワレモコウの花と呼ばれている部分は萼(がく)で、花は退化してほとんど見えません。その萼が色が褪せずに長く残るため、晩秋までそのまま残して楽しむガーデンもあります。ワレモコウを見つけると、切り花にして飾りたい気分になるのは私だけでしょうか。花屋さんでもこの時季には出回っているので、ぜひ部屋に飾ってみてください。
栽培の難易度
日当たりがよく、風通しのよい場所に植えつけます。過湿も乾燥も苦手なので、夏に雨の降らない日が続いたら、株元にたっぷり水やりします。草丈が高くなるうえ、茎がとても細いので、台風や強い雨などで倒伏しがちです。あらかじめ支柱を立てておくとよいでしょう。夏の間に一度切り戻しをして株をコンパクトにすると、程よい草丈に収めることができます。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。