〔解説してくださるかた〕荒木信夫(あらき・のぶお)先生よみうりランド慶友病院 院長、埼玉医科大学 名誉教授。1978年慶應義塾大学医学部卒業、1982年同大学大学院医学研究科修了。1988年から米国ペンシルバニア大学脳血管研究所に留学。1994年日本鋼管病院内科医長、1998年埼玉医科大学神経内科講師、1999年同助教授を経て2004年から同教授。2011年同大学医学教育センター長、2012年同副医学部長。2019年によみうりランド慶友病院副院長、2021年同院長。日本神経学会専門医、日本頭痛学会専門医。女性に多い片頭痛は、日常に大きな影響を与える
頭痛には、脳の血管の炎症や神経への刺激などが原因で慢性的に起こる頭痛(一次性頭痛)と、脳梗塞や脳出血のような別の病気に付随して起こる急性の頭痛(二次性頭痛)があります。
今回は代表的な一次性頭痛である片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3つを取り上げます。
片頭痛は若年から中年の女性に多く、「日本では女性の8人に1人くらいが片頭痛患者さんです」と荒木先生。
片頭痛では頭痛に吐き気・嘔吐、めまいなどを伴い、光や音、においにも敏感になります。空腹感やイライラする気分、生あくび、手足のむくみがあらわれることもあります。
また、1〜2割の患者には前兆として視野の中央にギザギザした光が出ることが知られています。
痛みは片側だけでなく、両側に起こることもあり、数時間から長いと3日間も持続します。頻度は月に1〜2回から10回以上とまちまちで、動くと痛みが増すため仕事や家事などに差し支え、生活の質が下がります。
片頭痛は月経や排卵、出産、更年期といった女性ホルモンの変化がある時期に起こりやすく、空腹、睡眠の不足や過多、ストレス、飲酒、カフェイン、チョコレートなどの食品、天候や温度の変化、光、音、においなどが引き金になります。
原因としては、脳の視床下部が刺激を受けたときに顔の皮膚の感覚を司る三叉神経に炎症が起こったり、血管が拡張して三叉神経を興奮させたりすることが関連すると考えられています。「遺伝的な要因もありますが、詳細は不明です」。
痛みが始まったら、静かな暗い場所で眠ったり、痛む部位を冷やしたりするのが効果的です。
●片頭痛
頭の片側に拍動性の強い痛みが出て、吐き気を伴う。
体を動かすと痛みが悪化する。
光や音に敏感になる。
●緊張型頭痛
頭の両側が締めつけられるように痛むが、体を動かしても痛みは悪化しない。
●群発頭痛
片側の目の奥に激痛が起こり、目が充血して涙や鼻水が止まらなくなる。このような頭痛が夜から明け方に1〜2時間、ほぼ毎日1〜2か月間続く
後編:
鎮痛薬の連用が招く薬剤性頭痛にも注意を。知っておきたい頭痛の最新の治療法>> イラスト/にれいさちこ 取材・文/小島あゆみ
『家庭画報』2022年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。