天野惠子先生のすこやか女性外来 第4回(04) 日本の女性医療、性差医療の先駆者で、ご自身の更年期体験も山ほどお持ちの、天野惠子先生の連載「すこやか女性外来」。今回は、天野惠子先生が推薦する、全国・女性外来を紹介します。
前回の記事はこちら>> 【天野惠子先生が推薦】全国・女性外来を訪ねて
こころとからだの杉本クリニック 院長 杉本 貴美子先生
●前回の記事
更年期のメンタルを改善するには? 症状に応じた漢方薬や生活習慣の見直しを漢方も心理療法も。持つものすべてを使って、
患者さんの“治る力”を呼び覚ます
杉本 貴美子先生(すぎもと・きみこ)関西医科大学附属枚方病院女性心療内科、天理よろづ相談所病院心療内科を経て2015年に心療内科、漢方内科、女性内科のクリニックを開業。漢方や、SFA(解決志向型アプローチ)を基にさまざまな心理療法からの学びを生かした治療を行う。自我状態療法国際認定セラピスト。日本臨床催眠医学会理事。「どちらの薬が合いそう?」患者さんと方針を相談
原因がわからず病名がつかなくとも、症状が少しでも楽になればいい。一貫した治療方針に則り、杉本貴美子先生は持てるすべての療法を駆使しています。
なかでもベースとなるのが漢方。その根幹である心身一如(しんしんいちにょ=心と体は一体である)の考え方は、心療内科医療の基本そのものでもあり、複雑で多岐にわたる更年期症状を抱える女性の頼もしい味方にもなります。
肩甲骨をほぐす、おなかを触るなど体に触れる診療が安心感と信頼を生み、治ろうとする力の源となる。座り心地のよい椅子と抱き心地抜群のぬいぐるみが置かれたカウンセリングルーム。杉本先生が目指すのは、患者さん主体の医療。たとえば効能の書かれた漢方薬の一覧表を一緒に見ながら「これとこれ、どちらの薬が合いそうですか?」と聞く。
「どの薬を選ぶかで、隠れたつらさが垣間見えたりもします。次の診察で効果をフィードバックしてもらい、同じ薬を続けるか、違う方法を試すかなど治療方針を相談します。“治すのは自分なんだ”と主体性が生まれると、不思議と体の症状も軽く感じられるものです」。
無理に話さなくていい。帰り道は希望とともに
漢方薬を処方するときは「その日の具合で分量を調節してください」とひと言添えることがあります。症状をセルフコントロールする習慣が身につき、“だいたい半分の量”など曖昧さに慣れると完璧主義の傾向が少し柔軟になることもあるといいます。
漢方薬の分量を自分で調節することで、患者さんは症状のセルフコントロール法を学ぶ。杉本先生の診療スタイルは数々の心理療法が下敷きになっています。会話をしながら心は無意識に導かれ、眠っていた“治る力”が目覚め、気がつくと楽になっている......。
「無理に全部を話そうとしなくていい。いつか話したいタイミングが来たら、そのときで大丈夫。診察室の中で少し楽になって、以前よりも希望を持った状態で帰ってもらえるようにいつも心がけています」
待合室の本は杉本先生から患者さんへの“間接的メッセージ”だ。 Information
こころとからだの杉本クリニック
大阪府八尾市山城町2-2-10
- *完全予約制(初診枠に制限あり)。 お問い合わせ方法はHPでご確認ください。
撮影/本誌・武蔵俊介 取材・文/浅原須美
『家庭画報』2022年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。