【8月の食養生】
◆温かいお粥で胃腸を温める
夏バテは胃腸の不調から起こることが多く、暑い日に温かいお粥で胃腸を温めるのも立派な夏の食養生です。例えば下痢のときはにらと梅干しを加える、膀胱炎のときはあずき入りのお粥にしょうがを足すなど症状に応じて食材を工夫してみましょう。
胃腸の冷えには、玉ねぎに丁子(ちょうじ=香辛料のクローブ。胃腸を温め腹痛などをやわらげる作用がある)を刺して煮込んだスープもおすすめです。
下半身が冷えて生理痛や生理不順があるときは、牛乳200mlにサフランを2~3本入れて煮立たせ、はちみつで味をつけたサフランホットミルクを。
◆夏の滋養食材・土用しじみ
土用にしじみを食べる習慣は古くからありました。夏のしじみにはカルシウム、鉄、ビタミンB類、必須アミノ酸、タウリンがとびぬけて多く含まれ、暑さ続きで疲れた体には最高の滋養食材です。殻からも栄養分が出てくるので、スープや味噌汁などでいただくときは、殻つきのまま調理します。
【漢方薬局だより】
冷房の温度は高めに。夏向きの薬湯も毎年8月には、「暑さより冷房のほうがつらい」と訴える女性が漢方相談に大勢訪れます。特にスーパーの生鮮食料品売り場やレストラン、スーツ姿の男性の多いオフィスなどでは室温が低めに設定され、肩こり、頭痛、下痢、慢性疲労など全身に及ぶ症状に悩まされるといいます。
つらい症状には漢方薬を処方するほか、衣類の調節や食養生で冷えから身を守る方法を伝え、自宅の室温を高めに設定することなども提案します。体を暑さに慣らしていくことも大事な養生です。
驚くのは、入浴をシャワーだけですませている女性が少なくないこと。夏でも毎日湯船につかって体の芯から温めるのは健康の基本です。鎮静効果のあるラベンダーの精油を数滴垂らせば香りもさわやかですし、陳皮(ちんぴ=みかんの皮を乾燥させたもの)を袋に詰めて浮かべた陳皮湯は腰痛や貧血にも効果的な薬湯です。
〔解説してくださったかた〕横浜薬科大学特任教授・薬学博士 漢方平和堂薬局店主 根本幸夫先生1947年生まれ。1969年東京理科大学薬学部と東洋鍼灸専門学校を同時に卒業後、さらに鍼灸と中国医学を学ぶ。「普段の生活こそが治療の場」をモットーに、漢方平和堂薬局(東京都大田区)では多くの人々の健康相談にのり、養生法をベースに漢方薬処方を行う。(社)日本漢方連盟理事長。前・横浜薬科大学漢方和漢薬調査研究センター長。著書多数。 撮影/本誌・武蔵俊介 イラスト/浜野 史 取材・文/浅原須美
『家庭画報』2022年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。