365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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ソバの花を間近でご覧になったことはありますか? 純白の小さな花、こんなにかわいいんです! 葉も大きなハート形!■属科・タイプ:タデ科の一年草
■花期:5月〜6月、8月〜9月
■草丈:60〜130cm
食べるだけでなく、かわいらしい花にも注目を!
10月〜11月の新蕎麦が待ち遠しい、という蕎麦好きの皆さま、逆算するとちょうど今頃畑に花が咲いていますよ。ソバの栽培には夏まきと秋まきがあり、どちらも種をまいてから収穫まで2か月半くらいかかります。
私がよく訪ねる長野県のガーデンでは、この時期は周辺のソバ畑が、そこだけ雪が積もったかのように真っ白になります。ここで栽培されるのは‘信州大そば’や‘信濃1号’など長野県で育種された品種が多く、これが全国的にも有名な「信州蕎麦」となるわけです。
さて、そのソバに赤花もあることをご存じでしょうか。標高約4000mのヒマラヤの麓には赤花が咲くソバがあり、それをもとに育種されたのが‘高嶺ルビー’。赤花といっても濃いめのピンクで、とてもかわいらしい花色です。食用にするのはもちろんですが、一面濃いピンクに染まる畑の景色はとても美しく、長野県では景観づくりとして積極的に赤花ソバの栽培を進めているそうです。
花散歩でなぜソバを取り上げたかというと、庭で切り花用として白花と赤花のソバを栽培していてる方に出会ったからです。間近で見せてもらったときに感じた「えっ? ソバの花ってこんなにかわいらしかったの」という小さな感動を皆さまにも伝えたくて…。花だでけなく大きな葉もハート形で愛らしい! じつは切り花としても出回るそうです。限られた期間で少量しか出回らないので、その方はそれなら自分で育てよう、と考えたそうです。庭に小さなソバ畑があり、それが白と赤に染まる景色はとても新鮮でした。
今回のソバに関しては、都市部の住宅地を散歩しても見かけることはありませんが、もしソバの産地に出かけることがあったら、ぜひ花をアップで愛でてみてください。
9月下旬の長野県のソバ畑。赤花ソバが一面に咲いています。おいしい新蕎麦を食べる前に、ソバの花が生み出す美しい景観をお楽しみください。栽培の難易度
夏ソバは6月初旬、秋ソバは8月初旬がタネまき適期です。日当たりがよく、水はけがよい土壌にタネまきします。ソバは多湿に弱いので、水はけがよいことは大切な条件で、水やりも控えめにし、やや乾燥ぎみに育てるようにします。痩せ地でも育つ丈夫な性質なので、生育途中での施肥は必要ありません。肥料が多すぎると草丈が伸びて倒伏しやすくなるので気をつけて。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい ・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。