シャツ21万円 パンツ16万5000円/ともにディオール(クリスチャン ディオール)観客の一人だった学生が14年後の今、舞台の中心に立つ
2021年に初めて挑んだミュージカルでは『ポーの一族』の美少年アランを演じた千葉雄大さん。その美貌は、少女漫画のキャラクターがそのまま三次元の世界に現れたようだった。舞台での経験は、どんな影響をもたらしたのだろうか。
「僕はまだ両手で数えられるほどしか舞台作品を経験していませんが、毎回、お稽古、そして本番を重ねて終わりを迎えると、楽しかった思いとともに寂しさもありますね。俳優としての自分のすべてを出しきった感があって、抜け殻みたいになるんです。その後、映像作品の現場に入って立て続けに同様の状況にいると、いきなり違うギアが入るときがあります。これは舞台で経験したことの影響力だと思うので、自分にとって大きいものだと思っています」
千葉さんを待つ次の舞台は、日本の現代演劇を牽引してきた劇作家・演出家のKERAこと、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんが書き下ろす新作だ。千葉さんがKERAさんの作品と最初に出会ったのは、進学のために上京した頃に遡る。
「僕が大学生だったときのことなんですが、当時は舞台というものをそんなに観たことがなかったと思うんです。まさにお上りさん気分で、シアターコクーンで観劇しました。それがKERAさんの『どん底』だったんです。当時のパンフレットを見て観劇後に感じた余韻みたいなものが甦ってきました。あれはどういうことだったんだろうって、自分なりに考えていたように思います。そんな観客の一人だった僕が、KERAさんの舞台に出演させていただけることになったなんて、我ながらすごいことだなと思います」
『どん底』とはロシア文学の不朽の名作で、2008年にKERAさんが上演台本と演出を手がけ、話題となった作品。
今回は昭和30年代初頭を舞台に笑いに取り憑かれた人々の人間ドラマを描く。千葉さんはどんな準備をしているのだろう。
「現時点ではワークショップという形で、昭和30年代や喜劇を題材にしたドキュメンタリーや松竹新喜劇などの映像を観たり、実際に台本を読み合わせたり、演じたりしています。例えば岸田國士の『かんしゃく玉』の台本をKERAさんからその場で渡されて、共演者の瀬戸(康史)さん、勝地(涼)さん、伊藤(沙莉)さんの4人で演じました。一人の女性を取り巻く何人かの男性がいて、その中で僕は最初に女性に近づく役(笑)。今とは違う語り口や“片思い”という設定でも虎視眈々と狙う人もいたり、腰巾着みたいになりながら実は想いを寄せている人もいたり、普遍的な題材が描かれているのが面白いと思いました。戦後の世の中は今と違う世界だと思いますが、もしかすると全部をふるいにかけたら、残るものは一緒なのかもしれませんね」