職人技の極みを感じるセッティング
月桂樹に想を得てデザインされたネックレスは、オリジナルのカットが施され、格別の存在感があります。地金を極力見えないようにし、ダイヤモンドの輝きが胸もとで品よく際立つようなセッティングに、卓越した職人技が感じられます。ネックレス(Pt×ダイヤモンド計60.296ct)8800万円/ギメル ●お問い合わせ/ギメルトレーディング TEL:0797(22)0850今まで見たことのないカットとセッティング
解説/山口 遼(宝石史研究家)
私ごとになるが、60年以上もジュエリーを眺め続けていると、ほとんどのジュエリーに一種の既視感というか、ああ、これどこかで見たねという思いがつきまとう。いわばジュエリーのすれっからしになる。
それでも時々、この宝石は何だ、どうやって作ったのだと思わず居住まいを正すジュエリーに出合う。今回ご紹介する芦屋の「ギメル」の最新作のネックレスも、そんなジュエリーである。
これを見たとき、花のデザイン、それも子どもが描くような小さな花に葉が2枚というデザインの繰り返しかと思ったが、どうも引っかかる。よくよく見ると、2枚の葉を構成しているダイヤモンドの留め方が全くわからない。爪が全く見えないのだ。思わず座り直した。
そもそもこのダイヤモンドが只者ではない。外形はマーキスと呼ばれる船形、底は平らで上の部分には大きく面をとったカットが施されている。一種のローズカットに見えるが、違う。これまで見たこともない、名前もないカットだ。
ダイヤモンドの2つの先端に小さな穴を開け、台座から立ち上げた小さなピンをその穴に通して留めているのだ。ちょっと見ではわからない緻密な細工。
しかも船形のダイヤモンドは全て大きさが微妙に違う。それにきっちりと合わせた台座を作り、それぞれをつなぎ合わせてしなやかに動くネックレスに仕上げている。
これこそ作る技術と素材への、執念にも近い凝りようで有名なギメルならでは。ここ10年ほどで啞然となった唯一のジュエリーだ。
表示価格はすべて税込みです。
撮影/栗本 光
『家庭画報』2022年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。