365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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黒みがかった赤紫の葉がしゃれたペニセタム‘バープルファウンテン’は、秋に上がる花穂も赤みがかってとてもきれい。■属科・タイプ:イネ科の宿根草
■花穂の観賞期間:7月〜10月
■草丈:30〜150cm
身近な場所でもきっと花穂が上がっています
以前の回で
ススキはいま欧米で注目されているオーナメンタルグラスと紹介しました。オーナメンタルグラスとは、葉や花穂に観賞価値があるグラス類のことですが、ススキの他にもいろいろな種類があります。ペニセタムも代表的なグラスですが、きっと皆さまの身近な場所でも育っていると思いますよ。チカラシバやギンギツネも小型のペニセタムと聞けば、思い当たる方も多いのでは?
ちなみによく似たグラスにネコジャラシがありますが(正式な名前はエノコログサ)、チカラシバやギンギツネは花穂がもっと大きく、葉も含めて堅い印象です。
アオチカラシバと呼ばれるペニセタム・アロペクロイデス。初夏から夏には淡い緑色の花穂が、秋には茶色みを帯びます。野生種に比べると草丈が低く、株がコンパクトにまとまります。耐寒性もあります。チカラシバやギンギツネは草丈が低めですが、ペニセタムには草丈が高くなり、さらに大きな花穂をつけるタイプもたくさんあります。しかも、花穂の色はシルバーや茶色、赤やピンクなどがあり、グラスといえども華やかな印象があります。オーナメンタルグラスの中でも、これほど花穂の色のバリエーションが多いのはペニセタムくらいではないかと思います。
いまやオーナメンタルグラスは、ナチュラルな雰囲気の庭づくりに欠かせない存在。日本にあるイングリッシュガーデンでも、グラスを上手に取り入れたデザインをしているところが多くあり、ペニセタムもますます注目を浴びると思います。
まるで秋の日差しを吸収したかのような輝く花穂。それが風に揺れる景色はとても爽やかで、眺めているだけで心地よくなってきます。春から夏の元気いっぱいの庭から、ぐっと落ち着いた景色へ。ペニセタムをはじめとするオーナメンタルグラスには、庭の雰囲気をがらりと変える力があると思います。
栽培の難易度
ペニセタムは熱帯や亜熱帯が原産地なので、耐寒性は強くはないのですが、耐暑性はとても優れているので、真夏の暑さの中でも元気に育ちます。暖地・温暖地では越冬も可能ですが、寒冷地では晩秋に掘り上げて鉢に植え、ハウスの中などで管理するのがおすすめです。晩秋に葉と花穂が枯れたら、株元から15cmくらいの所で切り戻すと、翌春には新しい葉が出てきます。チカラシバなど草丈が低いタイプは、株元から5cmくらいで切り戻してかまいません。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。