韓国に生まれ、ソウル大学校美術大学在学中の1956年に来日、その後日本大学で哲学を学んだ李禹煥(リ・ウファン)。
李禹煥、フランス、アルル、アリスカンにて、2021年 © StudioLeeUfan, photo: Claire Dorn以降、50年以上にわたり国内外で作品発表を続け、近年はグッゲンハイム美術館、ヴェルサイユ宮殿、ポンピドゥー・センター・メッスで個展を開催。2010年には香川県の直島に安藤忠雄設計による「李禹煥美術館」が開館している。
《関係項》 1968/2019年 石、鉄、ガラス 森美術館、東京 Photo:Kei Miyajima哲学的な李の作品について、国立新美術館主任研究員の米田尚輝さんに聞いた。
「古来、絵画は何らかの対象を写し取ること、彫刻は対象を三次元で再現することが原則とされてきました。ところが20世紀初頭に抽象芸術が誕生し、この原則が打ち破られます。こうした背景から、1960年代後半、李は素材にほとんど手を加えない彫刻を考案します。それは抽象彫刻とも異なる新しい彫刻でした。彼は作品(もの)とそれを取り囲む環境との関係性から発生する視覚現象を重視したのです。このような傾向をもつ李を含めた数名の作家の集団は“もの派”と呼ばれました。近年の李は、展示環境に依存するサイト・スペシフィックな作品群を発表し続けています」
《点より》 1977年 岩絵具、膠/カンヴァス 東京国立近代美術館《点より》 1975年 顔料、膠/カンヴァス 国立国際美術館本展の見どころは?
「館内展示だけでなく、野外展示にもご注目ください。2014年のヴェルサイユ宮殿での個展で発表され、話題となったアーチ状の巨大な作品と同シリーズの《関係項―アーチ》などが展示される予定です」
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構成・文/安藤菜穂子
『家庭画報』2022年9月号掲載。
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