追悼・柳原一成さん 秋の恵み 近茶流のご飯 第2回(全4回) 米は日本料理の象徴、日本の料理はご飯をおいしく食べるためにある、と常々おっしゃっていた近茶流江戸懐石先代宗家の柳原一成さん。今まで本誌でご披露いただいたご飯料理の数々を通して、江戸の食文化や心を大切にした柳原さんを偲び、その功績を振り返ります。
前回の記事はこちら>> 近茶流は羽釜でご飯を炊く
羽釜で炊いた輝くようなご飯。「炊飯鍋が火にかかっているときは中の様子を見るために数秒ならふたを開けても大丈夫。ふたを取ってはいけないのは火を止めた後、蒸らしているときです」。写真/阿部 浩羽釜は炊飯における理想的な形状
近茶流では羽釜を使ってご飯を炊き上げます。そもそものお米の特質や炊飯の仕組みを考えると、理想は羽釜に行きつくと柳原一成さん。「おいしいご飯炊きの“正解”」というページでは、なぜ羽釜がベストなのかという理論を教えてくださいました。
「水分を含んだ米のでんぷん質が高熱で加熱されることで“アルファ化”され、ご飯となります。それには火力の強さ、適度な圧力、米の対流による均一な加熱が大事な要素になります」。
重みのある羽釜の木ぶたであれば、しっかりと密閉し、釜内部に圧力をかけることができます。また適度な深さと丸みを帯びた底の形状も、大きな対流を生みやすく、米粒が踊るように動くため、全体が均一に加熱されます。
こんろには“はかま”を置いて釜をのせますが、そのように安定させることで高温の熱が効率よく釜に伝わるのです。ある程度深さのある土鍋や鋳物鍋でも、羽釜に近い炊き上がりが期待できるとか。この秋の新米で、羽釜炊きにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
炊きたてのご飯大好き!と孫の修太朗くん(当時3歳)もにっこり。ご飯はおひつに移してからいただきます。2019年10月号より。写真/久間昌史 柳原一成(やなぎはら・かずなり)
写真/久間昌史1942年近茶流先々代宗家柳原敏雄の長男として東京に生まれる。東京農業大学農学部卒業。「柳原料理教室」を主宰し伝統的な日本料理を指導する傍ら、自ら野菜を育てるなど食材の研究にも力を注ぐ。2022年1月29日、79歳で逝去。
〔特集〕追悼・柳原一成さん 秋の恵み 近茶流のご飯
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追悼・柳原一成さん 秋の恵み 近茶流のご飯02
この秋の新米で、「羽釜炊き」にチャレンジ!
この特集の掲載号
『家庭画報』2022年10月号
協力/近茶文庫 文庫長・柳原紀子 取材・文/露木朋子
『家庭画報』2022年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。