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近茶流宗家・柳原尚之さん「伝え続けたいご飯料理2品」季節を慈しむ健やかなご飯を

2022.09.27

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追悼・柳原一成さん 秋の恵み 近茶流のご飯 最終回(全4回) 米は日本料理の象徴、日本の料理はご飯をおいしく食べるためにある、と常々おっしゃっていた近茶流江戸懐石先代宗家の柳原一成さん。今まで本誌でご披露いただいたご飯料理の数々を通して、江戸の食文化や心を大切にした柳原さんを偲び、その功績を振り返ります。前回の記事はこちら>>

近茶流宗家・柳原尚之さん


近茶流宗家・柳原尚之さん

柳原尚之(やなぎはら・なおゆき)
近茶流宗家、柳原料理教室主宰。教室での指導にあたるほか、テレビドラマや映画の料理監修や国内外での講演など、精力的に活動する。この春には、江戸の酢をテーマに醸造学の博士号を取得。歌舞伎に夢中の長男・修太朗くん(7歳)とともに。

季節を慈しむ健やかなご飯を



「近茶流は懐石料理の流派ですが、原点は家庭での料理にあります。よい食材を選び、無駄なく丁寧に扱って、特性を生かすと、普段のお料理がご馳走になります。そしてレシピだけでなく、その背景にある文化やストーリーも学べる場であるように。これからも祖父、父の志を継いだ“料理の学び舎”でありたいと願っています」と新しく宗家になられた柳原尚之さん。

江戸料理にご自身なりの解釈を加えたレシピから、伝え続けたいご飯料理2品をご紹介いただきました。

「江戸の汁かけご飯の文化を今風にしようと、父が得意とした“卵じめ”をベースに考えました。父からも褒められた味です」とにっこり。

もう一品は、ご自身のライフワークの一つである「お酢」がテーマ。「具をきれいに並べた姿が、屋根のこけら葺きを思わせることからついた料理名です。室町時代頃の文献にも“こけらずし”の名が見られます」。

尚之さんスタイルは、ヴィーガンのかたでも楽しめるようにと具は野菜のみ。漬物やかぼす汁、酢めしなど各種の酸で複雑に味を重ね、さらに重石をすることで全体に味を回していきます。

「昔の文献には分量もあまり書いていないし、盛りつけにも触れていない。だから行間を読んで、料理を考えていくのが楽しいのです。その面白さ、大切さは父から学んだ大事なことの一つですね」。

かにの玉じめ


近茶流宗家・柳原尚之さん
器はお母さまの紀子さんがチョイス。「桐の花と露芝の京塗りのお椀は、一成さんお気に入りの器です」。

材料(2人分)と作り方
(1)きくらげ2枚は水でもどし、熱湯をかけ、せん切りにする。にんじん少々は極細のせん切りにする。

(2)小鍋にだし汁2カップ、塩・薄口醤油各小さじ2/3、みりん大さじ1/2を合わせ、(1)を加えて火にかける。

(3)(2)の汁がわいたら、かにのほぐし身50グラムを加え、同量の水で溶いた片栗粉少々を加えてとろみをつける。

(4)卵2個を割って溶きほぐし、(3)に回し入れ、とろとろにする。

(5)ご飯を器に一文字によそい、(4)を半量ずつかけ、切った三つ葉少々、露しょうがをかけていただく。

精進 彩りこけら寿司


近茶流宗家・柳原尚之さん

箱ずしや押しずしの原型ともいわれる「こけら寿司」。華やかな色合いも目のご馳走。沢栗挽曲盆は村瀬治兵衛作。撮影/久間昌史

材料(作りやすい分量)と作り方
(1)米1カップ でご飯を炊き、炊きたてにすし酢(米酢25ml、砂糖大さじ1、塩小さじ1/2)を回しかけて、団扇であおぎ、すしめしを作る。

(2)米酢50ml、砂糖大さじ2、塩小さじ1/5を合わせ、甘酢を作る。

(3)煮汁A(だし汁1/2カップ 、塩小さじ1/3、みりん小さじ1、薄口醤油少々)を合わせて温め、塩ゆでにした枝豆5房、オクラ1本をつけて冷ます。

(4)パプリカ赤・黄各1/2個は種を除き、皮をじか火であぶってから皮をむく。塩少々とかぼす1/2個分の絞り汁をかける。

(5)かんぴょう1本は塩もみをして柔らかくなるまでゆで、煮汁B(だし汁1カップ 、砂糖大さじ3、塩小さじ1/4)で5分ほど煮て火を止め、味を含める。冷めたら長さ10センチに切り、結んでおく。

(6)干ししいたけ2枚は、水でもどしてから煮汁C(だし汁1/2カップ 、砂糖大さじ2、醤油・みりん各大さじ2)に入れ、味が含むまで煮る。

(7)みょうが2個は半分に切ってからゆで、(2)の甘酢大さじ2をかける。れんこん30グラムは皮をむき、水からゆでて透明感が出てきたら取り出して水気をきり、(2)の甘酢大さじ3をかける。

(8)おかひじき適量は塩ゆでして、水にとる。きゅうり・なす・かぼちゃのぬか漬けは適当な大きさに切る。

(9)すし枠に(1)のすしめしを詰め、形よく切った(3)~(8)を飾り、重石をかける。食べやすい大きさに切って供する。
協力/近茶文庫 文庫長・柳原紀子 取材・文/露木朋子
『家庭画報』2022年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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