きものならではの綺麗な色をお召しになって
劇場にいらしていただきたいですね
――インタビューが行われた1月の国立劇場での公演でも、きもの姿のお客様を多く目にしました。
梅枝「つい先日も、僕の家の後援会の方々が“きもので歌舞伎を観に行く会”を企画してくださったんです。一列目から30〜40人、ずらりときもの姿の方が並んだ様子は、舞台から拝見していても壮観でした。日本人は洋服だとシックな色を選びがちですが、きものには、洋服では着ることのできない綺麗な色がたくさんあります。ぜひ、綺麗な色のきものをお召しになって、歌舞伎の公演にいらしていただきたいですね」。
――女方として、女性のきものの着こなしにも精通している梅枝さん。奥様のきものスタイルにアドバイスをすることはあるのでしょうか。
梅枝「家内の母がお茶の世界の人で、きもののこともよく知っているので、僕が口出しをすることはありません。あ、でも一度だけ“帯をもうちょっと下に締めた方がいいよ”と言ったことがありますね。歌舞伎の芝居では娘役は帯を上に、女房役は少し下に締めるんです。家内は歌舞伎役者の奥様方のなかでは、まだ一番若い位の年齢ですが、 “女房役”としてお客様にご挨拶する立場ですので(笑)。
――そんな奥様、小川素美さんの劇場での装いを拝見しました。淡いピンクからパープル、ブルーへと美しいグラデーションを描く暈しのきものがお似合いです。
小川素美さん「結婚のお祝いにいただいた白生地を、萬屋の義母(中村時蔵夫人)が丹波の職人さんにお願いして染めてくれました。実は今日、おろしたばかりなのですが、いくつもの色を使っているので、そこから拾って帯や小物のコーディネートを色々と楽しめそうです」。
――帯は、この季節にぴったりの梅をあしらったもの。
小川素美さん「主人の名前が梅枝なので、梅の柄は、季節に関わらず着ることが多いですね。モチーフとしては他に、萬屋の紋である蝶の柄もだんだん増えて参りました」
――劇場には、2015年に誕生したご長男の大晴くんと一緒に来ることも。
小川素美さん「抱っこしたり、走り回っているのを追いかけたり。母親になってからは着崩れしないよう、裾を少し短か目に着付けるようになりました」。
――茶道の家に育ち、歌舞伎の家に嫁がれ、奥様として、お母様として、少しずつきもの選びや着こなしも変化しているのでしょうか。
小川素美さん「お客様をもてなす立場として控えめに、という意味では、お茶のきものも劇場のロビーに立つ時のきものも共通していると思います。実家の母と、萬屋の義母と、両家に相談できる相手がいるのは幸せなことですので、色々と教えてもらいながら、少しずつ自分らしさを出せたら良いなと思っています」
国立劇場 3月歌舞伎公演 「増補忠臣蔵 ―本蔵下屋敷―」 「梅雨小袖昔八丈―髪結新三―」
出演:中村鴈治郎、尾上菊之助、中村梅枝、中村萬太郎、寺嶋和史、市村橘太郎、片岡亀蔵、河原崎権十郎、市村萬次郎、市川團蔵、他
期間:2018年3月3日(土)~3月27日(火)
場所:国立劇場
12時開演
※3月16日(金)・23日(金)は11時30分開演、16時30分開演の2回公演。
※3月10日(土)・11日(日)は休演。
撮影/伏見早織 構成・文/清水井朋子