365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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ちょうど今の時期に、オリーブより少し大きな黒い実をたくさんつけています。ジャムやシロップなどに利用できますが、イタリアにはマートルの実から作るリキュールもあります。■属科・タイプ:フトモモ科の常緑低木
■花期:5月〜6月 実の収穫期は10月〜11月
花が美しく、実がなる!ハーブとしても人気の花木
いつもは花の時期に紹介していますが、今回は今ちょうど実がなっている定番の花木を紹介します。オリーブを大きくしたような形の黒い実をたくさん実らせているのはギンバイカ。黒いので遠目にはわかりづらいのですが、ぜひ探してみてください。そして、秋に実るこの黒い実からどんな花を咲かせるか想像してみてください。
じつはギンバイカは、実はもちろん花や葉にも芳香があり、マートルという名でハーブとしてもよく知られています。
ギンバイカの名前のとおり、丸みのある5弁の、ウメに似た白い花を咲かせます。この花が何とも魅力的なのです。ウメと同様にしべが花弁から飛び出すほど長く、それが繊細な印象を与えます。葉が小さめなので、花がよく目立ち、まん丸の蕾もかわいらしい!
しべが長い白い花は繊細で優しい印象。蕾がたくさんついているので、これはまだ咲き始めの状態。満開になると上品ながらとても華やかな雰囲気になります。私はウメの花が大好きなので、ギンバイカもじつに私好みの花木で、散歩道でもどこかにギンバイカがないか、花の時期にも実の時期にも探し求めています。花数が多いので実もたくさんなり、それもギンバイカの魅力ではないかと思います。
花、そしてよく茂る葉、黒い実のいずれも料理やお茶などに利用されます。つややかな葉は触るだけでは香りはしませんが、叩いて揉むとほのかにフルーティな香りが生じます。花はできるだけ開花直後に摘み、そのままエディブルフラワーとして食べられます。実は完熟したら収穫して乾燥させておくと、ソーセージや肉料理の風味づけなどに利用できます。
美しい花が楽しめ、実も葉もハーブとして利用できるなんて、かなり魅力的な花木だと思いませんか?常緑樹なので、目隠し目的で生け垣や窓の前に植えられることも多く、幅広い用途で活躍してくれます。
栽培の難易度
日なた、または明るい日陰に植えます。ただし、日当たりがよいほうが花は多く咲きます。植えつけ時に元肥を施せば、その後の追肥は必要ありません。翌年からは毎年2月に株周りに有機質肥料を埋め込んでおきます。耐暑性は強いが、耐寒性はやや弱いので、冬季に寒風にさらされない場所を選びます。寒冷地では株元をマルチングするなど、防寒対策が必要です。花後に込み合った枝を抜き、樹形を整える程度の剪定を行います。その後は伸びてきた徒長枝を随時切り戻します。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。