365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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日本に自生するノイバラのローズヒップ。小さくて真っ赤な丸い実がとてもキュートです。■属科・タイプ:バラ科の落葉低木
■花期:10月〜12月
美しきバラたちの優雅な置き土産を楽しむ
秋バラが咲き誇るこの時期、もう一つバラのお楽しみがあります。赤やオレンジ色の実、いわゆるローズヒップです。
徐々に枯れ色が増えていくなか、たわわに実る鮮やかな色の実はよく目立つだけでなく、ロマンチックな雰囲気を感じさせてくれます。このたくさんの実は、初夏に美しく咲いていた花の置き土産なんだなあ、と少し感慨にふけったり…。
とくに散歩の途中で見つけたときには、ここにはどんなバラが咲いていたかな?白だったか、ピンクだったか、など、初夏に咲いていた様子を思い出しながら、今年のバラは咲くのが早かったなぁ、などバラの季節の記憶が甦ります。それが楽しくて、この時期の散歩ではローズヒップを探しながら歩いています。
さて、ハーブとしておもに利用されるローズヒップは、ドッグローズと呼ばれる原種系のロサ・カニーナで、イヌバラの和名でも知られます。ローズヒップにはビタミンCが豊富に含まれていることから、ローズヒップティーなどにもよく利用され、その目的でドッグローズを栽培しているところも多くあります。
また、日本に自生するハマナスも大きなローズヒップをつけ、ジャムなどの加工品も市販されます。ハマナスは原種のバラの1種で、学名をロサ・ルゴサといいます。各地のバラ園や観光ガーデンでは、イヌバラやハマナスを咲かせているところも多いので、ぜひ訪ねてローズヒップを愛でてみてください。
ほかにもオールドローズをはじめとする一季咲きのバラがこの時期にローズヒップを実らせます。バラの種類によって実の色も形も異なるので、写真を撮ってローズヒップの図鑑を作るのも楽しいと思います。
ローズヒップはドライにして利用できるので、これから迎えるクリスマスシーズンに向けて、ツリーの飾りやリース、スワッグなどを手作りするのも楽しいもの。それがしたくて、ローズヒップを目的に鉢植えでバラを育ててみようか、とも考えています。その際にはローズヒップをたくさんつける品種を選ぶことが大切ですね。
原種系のノイバラは、つる性で一季咲き。一重の楚々とした白い花を咲かせます。丈夫な性質で、生育も旺盛。栽培の難易度
植えつけ、水やり、施肥、剪定など、基本的な管理はバラと変わりありません。ただし、花の時期に花をたくさん摘んでしまうとローズヒップとして残らないので、花弁が散るまで待つことが実をたくさんつけさせるポイントです。手作りの素材として利用する場合は、11月下旬まで待ち、実が完全に乾燥してから切り取ると、色が鮮やかなまま残ります。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。