カルチャー&ホビー

縄文人が石棒や土偶に込めた祈り、願望。独自の“観念技術のカタチ”を探る

2022.10.03

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私たちに生きる縄文の遺伝子 10月・観念技術のカタチ

縄文10月

所蔵/山形県 山形県立博物館展示 国宝 土偶 西ノ前遺跡(山形県最上郡舟形町)

縄文人の世界観が投影される土偶。姿かたちが概ね復元できるものは数少なく、ゆえにそれらは驚くべき存在感を発揮する。国宝に指定された土偶は、大英博物館DOGU展でも脚光を浴びた。そのうちの1点、「縄文の女神」と呼ばれる縄文中期の土偶は、高さ45センチの威容を誇り、普遍的価値を帯びたデザイン性が感じられる。

明日への祈り



文=小林達雄(考古学者)

縄文人の道具箱には、狩猟漁撈具調理具など日常生活に必須の種類が揃っている。

それらは使い方や効果を容易に推測できるのだが、どうためつすがめつしても訳のわからない石棒や土偶に代表される種類がある。日常的な第一の道具に対する、第二の道具だ。

これらは呪術や儀礼、祭祀などの精神文化に関わり、第一の道具が担当しきれない分野さえ諦めることなく、実現の可能性を求めて、明日に向かって祈り、願望をつなぐためにひねり出されたカタチだ。

それらはヒトとは別の存在、つまり縄文人の観念世界にあったナニモノか(精霊)を表現しようと作られた可能性が高い。土偶は彼らの観念技術に関係し、同世代の世界のどこにも見られない縄文独自の持ち物なのである。
『家庭画報』2022年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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