江戸小物細工職人 服部一郎(はっとり・いちろう)さん
東京生まれ。葛飾区の伝統工芸士。高校卒業後、祖父、父の跡を継ぎ、職人となる。2年に1度程度、銀座松屋にて個展を開催。まめに書物に当たり、再現することが多いが、「こういうのがあれば、こんな形だろう」と想像で作るものもある。 写真提供/西島 聡その服部さんは2009年に亡くなりました。
「あの素晴らしい技が絶えてしまったことが残念でなりません。もう、あんな方は二度と出てこない。私は、芸術家よりも職人のほうが評価されるべきだと考えています。職人というものは、手間暇を惜しまず、作品を心底愛し、すべての工程を一人で作る。服部さんは、腕のいい職人のみが持ちうる誇りを持って、一心に作品を作っていらした。あらゆる点において、彼の跡を継げる方はいません」と稀音家さん。
今後、新しい作品が見られないのは残念ですが、稀代の「犬飼コレクション」を通じて、懐かしの風物に囲まれた活気ある江戸の市中に入り庶民の豊かな暮らしぶりを味わうのも乙なものです。
「花火屋」
江戸時代に花火売りはなかったようで、服部さんの想像の産物とのこと。長さ1.5センチの花火には桃色や水色、赤、緑の色紙と金色の紙が交互に巻かれています。想像を絶する手作業の連続。