「心を調える」秋 京都で新体験 第25回(全30回) 時代の変わり目、何かと心がざわめき、心が調(ととの)わないと感じる日々が続きます。今、私たちに必要なのは、心をからっぽにし、頭を整理する時間です。自分の心に、自分の人生に深く残る何かを求めて、日本の心の原点、京都に旅立ちます。
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注目の新店をご紹介します。旅のプランに合わせて選ぶ美味処で、古都の秋をご堪能ください。
割烹しなとみ(寺町丸太町)
【秋のおすすめ】手前から、銅鍋で供される「九条ねぎと牛肉の白味噌鍋」3500円。季節で野菜が替わり、夏は賀茂茄子、冬は海老芋の組み合わせに。松茸を鱧で巻いた「鱧と松茸のフライ」時価。昆布塩が添えられるが、地元客の中にはウスターソースをリクエストする人も。昔ながらの仕事を施した、頭も骨もいただける「子持ち鮎の柔らか煮」1600円。[一品料理]定番の丸鍋から秋の旬の味までお好みで選べる
長年、京都の板前割烹に勤め、日本料理の知見を深めてきた店主の高橋集一さん。閑静な御所東の一角に2021年4月にオープンした「割烹しなとみ」では一品料理を30種類ほど揃え、サービス担当の奥さまの綾子さんと二人でカウンターに立ちます。
白のシャツ姿でスッキリとしたカウンターに立つ、高橋集一さん。「京都の割烹の仕事を引き継ぐ、昔ながらの料理を心地よく味わっていただくのがうちのスタイル。品数も注文の順序も気にせず自由に選んでください」と語り、量の加減やおまかせにも細やかに対応。
半日かけて仕込む丸鍋や滋味深い白味噌鍋は食べ頃を長く楽しめるように炭火で温めます。地元客に人気のフライは、牛カツや鱧松フライといった素材重視のシンプルな仕立てに。
【定番】手前から、わさび醬油でいただく「京都産黒毛和牛のカツ」3500円。お酒のつまみとしてもよし、白ご飯と赤だしと一緒に定食風に味わうもよし。パリパリの皮としっとりとした身が絶妙な「ぐじ唐揚げ」2000円、生姜の香りを効かせたすっぽんの「丸鍋」2500円。希望すれば、鍋の後に雑炊に仕立ててくれる。ぐじは炭焼きでも楽しめる。留めのご飯や甘味のあんみつにも実直な仕事が見て取れ、器にもご夫妻のセンスや思いが感じられます。初来店ならば、料理はお二人の采配に委ねるのもおすすめ。一人客でも肩肘張らず、会話を楽しみながらゆっくりゆったりと過ごせます。
Information
割烹しなとみ(かっぽうしなとみ)
京都市上京区信富町315-4
- 要予約 一品料理のほかコース1万4300円〜(2日前までに要予約)
撮影/伊藤 信 取材・文/西村晶子
『家庭画報』2022年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。