天野惠子先生のすこやか女性外来 第5回(02) 閉経後に訪れる数々の試練の中で、女性が男性の何倍も注意を要するのが骨量の減少。“骨折しないこと”は女性が将来、要介護を免れるための大事な条件です。「危機感をもって骨粗しょう症対策を」と天野先生がすべての女性に呼びかけます。
前回の記事はこちら>> 骨量維持は更年期女性の重要な“ミッション”
骨粗しょう症を予防し、“転んでも折れない骨”をつくる
●前回の記事
骨粗しょう症を予防するために、骨量維持は更年期女性の重要な“ミッション”!天野惠子(あまの・けいこ)先生静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。“女性であること”が骨粗しょう症のリスクです
●加齢による骨量の変化
更年期の今は、骨量の減少を緩やかにする時期です
図のように女性の骨量は男性に比べて少ないうえに、エストロゲンの分泌が減る更年期以降、急激に落ちていきます。
20歳頃までに骨量を増やして丈夫な骨をつくり、40歳頃までは最大骨量を維持。更年期からは骨量減少をできるだけ抑え、高齢期は転倒・骨折を防ぐ──。
骨粗しょう症予防、介護予防には、一生を通して年代ごとの心がけが必要です。
手首、腕の付け根、背骨が折れやすく、特に太ももの付け根の骨折は要介護のリスクを高める。減り続けると、将来転倒・骨折・要介護のリスクが高まります
骨密度が若年成人平均の70パーセント未満になると骨粗しょう症と診断されます。下のグラフが示すように、女性の患者数が圧倒的に男性を上回り、高齢になるほど差が開きます。
強度を失った骨はちょっとした転倒で折れやすく、特に太ももの付け根(大腿骨近位部)の骨折は、治るまで歩けないので筋力も落ち、寝たきりから要介護状態になるリスクを高めます。
●骨粗しょう症の年代別有病率
Yoshimura N. J Bone Miner Metab 2009:27:620.●男女別・介護が必要となった主な原因(65歳以上)
介護が必要となる原因にも性差がある。男性は脳血管疾患などで突然倒れて要介護になるケースが多いのに対して、女性は認知症に次いで「骨折・転倒」の率が高く、加齢に伴い徐々に機能が低下して要介護になりやすい。「令和3年版高齢社会白書」より編集部で作成減少に早く気づくために正確な骨密度検査を5年に1度受けましょう
骨量の減少には特に自覚症状がないため、定期的に骨密度検査を受けて自分の骨の状態を知り、減り始めに早く気がつくことが大事です。40歳を過ぎたら5年に1度、骨量を測りましょう。
簡易な方法もありますが、腰椎と大腿骨近位部の骨密度を正確に測ることのできるDデキサXA法がおすすめです。検査結果が数字で示されると、骨への意識が高まり生活習慣を見直すきっかけになります。
*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。
URL:
http://www.nahw.or.jp/hospital-info*「女性外来オンライン」(天野惠子先生主宰)では、天野先生ご自身が厳選した女性の健康の回復や維持に役立つ信頼性の高い情報を発信しています。
公式サイト「女性外来オンライン」:
https://joseigairai.online/YouTube
「女性外来オンラインチャンネル」はこちら>> 撮影/鍋島徳恭 イラスト/佐々木 公〈sunny side〉 取材・文/浅原須美
『家庭画報』2022年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。