365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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真っ赤に染まる秋のイロハモミジ。紅葉の名所に限らず、個人邸の庭や外周りでもよく利用される身近な木です。■属科・タイプ:ムクロジ科の高木
■紅葉の時期:10月〜12月
紅葉しているのはモミジ?それともカエデ?
寒冷地ではすでに紅葉がピークを迎えているところもあります。日本気象株式会社の紅葉情報を見ると、今年の紅葉は平均並みだそうで、東京で紅葉が見頃を迎えるのは11月下旬、京都では12月に入ってからという予報が出ています。紅葉といえばカエデ。今回はカエデの紅葉について紹介します。
タイトルをカエデとするかモミジとするか悩みましたが、植物分類上からカエデとしました。紅葉と書いてモミジと言うように、紅葉が美しい木の代表はモミジには違いありませんが、じつはモミジもカエデもカエデ科に属し、植物学的には同じ系統なので、とくに区別はされていません。そのため正式な植物名はカエデとされ、モミジは日本における呼び名とされています。
日本には古くからカエデの自生種が多く見られ、その代表種がイロハモミジといわれています。なお、盆栽の世界では便宜上、イロハモミジのように葉の切れ込みが深いタイプをモミジ、ハウチワカエデのように切れ込みの浅いタイプをカエデと呼んで区別していて、その定義は園芸界全体にわたっています。
子どものときからモミジと呼んできた樹が、正式にはカエデという名前だと言われても、どこか納得できない気持ちになりますよね。個人的にはモミジはモミジのままでよいと考えますが、植物学上、カエデであることも頭に入れておいたほうがよいと思います。
モミジとカエデ、どちらにしても、あの目に焼き付くような美しい赤に染まる姿は、どんな紅葉をも凌駕する美しさで、年に一度、この時期にそれを愛でることができるのを幸せに感じます。京都をはじめとするモミジの紅葉の名所にもぜひ出かけたいのはもちろんですが、散歩の途中で見かけた1本のモミジの紅葉もまた、見逃せない美しさで、モミジの前で立ち止まり、うっとりと観賞させてもらっています。
栽培の難易度
日当たりがよい場所を好みます。乾燥が苦手なので、水はけがよく適度な湿度を保つ肥沃な土壌に植えます。地植えの場合は、苗木の植えつけ時にたっぷり水やりすれば、あとは雨まかせでかまいません。落葉後すぐに緩効性肥料を施します。カエデ類は休眠が短く、年明けすぐに活動を始めるので、剪定は12月に行います。自然な樹形を意識し、枯れ枝や外へ伸びすぎた枝を取り除きます。ほかの樹木に比べるとかなり剪定の適期が早いので、忘れないようにしてください。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。