365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> ツワブキ
ツヤのある大きな丸い葉の間から花茎を立ち上げ、黄色のかわいらしい花をいくつも咲かせます。■属科・タイプ:キク科の宿根草
■花期:10月〜12月
■草丈:20〜50cm
晩秋〜初冬に黄色の花を咲かす貴重な存在
2021年11月、東京駅に行ったときのことです。丸の内側の駅前ロータリーの植栽が、ツワブキの黄色に染まっていました。街中でこれだけのツワブキの群生があるのは珍しく、花が少ないこの時期に華やかな植栽があることにちょっと感動を覚えました。お世話になっている園芸家さんからいただいた情報を思い出し、東京駅に行ったついでに回り道してみたのですが、そのかいがありました。ただ、急いでいたので写真を撮れなかったことが心残りです。
Farfugium japonicumという学名からわかるように、ツワブキは日本及び東アジアに自生する宿根草です。日陰でもよく育つので、昔から日本庭園や個人邸の北側の植栽によく利用されています。漢字で書くと石蕗。海岸の岩場などでも育つ丈夫さからつけられた名前です。食用のフキと比べると葉がかなり厚手で、光沢があるのが特徴で、つやのある葉のフキ=ツヤハブキ(艶葉蕗)から転じてツワブキとなったという説もあります。
光沢のある葉は30cmくらいになるほど大きく、それが落葉せずに冬の間も茂ってくれるので、年間を通して緑を提供してくれるという意味でも、庭づくりにおいてありがたい植物だと思います。そして、いちばんの魅力は、さまざまな花が枯れていく晩秋〜初冬に、花茎をすっと立ち上げ、黄色の花を咲かせてくれること。この時期には散歩道で見かける花の種類も少なくなりますが、まるでスポットライトを浴びたように華やかに咲くツワブキを見つけると、パーッと明るい気持ちになります。
1本の花茎から花径3cmほどの花をいくつも咲かせるので、ボリュームがあります。栽培の難易度
耐陰性があり、日陰でも育ちますが、花をたくさん楽しみたいなら、日なた、もしくは明るい日陰に植えます。ただし、斑入り品種は強い日差しを浴びると斑がきれいに出ないことも多いので、明るい日陰が適しています。植えつけ時に元肥を施せば、追肥の必要はありません。地植えの場合、からからに土が乾いたときのみ水やりし、後は雨まかせでかまいません。花が終わったら花茎の根元から切り取ります。常緑なので、随時枯れ葉を取り除き、きれいな姿を保つようにします。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。