365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> ピラカンサ
真っ赤な実をびっしりとつけるピラカンサ。これはトキワサンザシの実です。カザンデマリの実はさらに濃い赤で、これより少し小さいのですが、見分けるのは難しそう。■属科・タイプ:バラ科の常緑低木
■花期:5月中旬〜6月中旬 実の観賞期:11月〜翌年2月
これだけ実をつけるということは、花もすごい!
秋には多くの木が実をつけて楽しませてくれますが、ボリューム感で存在を示すのがピラカンサです。鮮やかな赤やオレンジ色の実が、枝を隠すほどにびっしりつくのを見るたびに、「これだけ花が咲いたということよね」と納得し、今年もまた花の時期を見逃した〜と反省するのは私だけでしょうか。
花が咲くのは5月中旬〜6月中旬。この時期はさまざまな宿根草が咲くうえ、ちょうどバラの時期なので、ピラカンサが咲いていても見過ごしていたのだと思います。
ある年、そろそろ咲いているはず、と気をつけて見ていたら、ありました! 小さな白い花が無数に咲いているピラカンサ。これだけ花が咲けば、実もあのボリュームになるわ、と納得でした。これから年を越して2月まで実がなる樹姿を楽しめるので、散歩道で見つけたら、ぜひ来年の花の時期にも見に行ってください。
さて、学名のピラカンサでひとくくりにされますが、正確にはバラ科トキワサンザシ属には6種類があります。園芸においては、そのうち庭木などで広く利用されるトキワサンザシ、タチバナモドキ、カザンデマリ(ヒマラヤトキワサンザシ)の3種を指してピラカンサと呼んでいます。
トキワサンザシは赤い実、タチバナモドキは黄色〜オレンジ色、カザンデマリは濃い赤、と実の色で区別をしていましたが、最近では交雑も進んでいて、正直なところ、散歩時に見ただけでは、正確に分類するのは難しくなっています。これだけ実がびっしりつくのはピラカンサ、と覚えておくのがおすすめです。
この連載にきれいな写真を提供してくださるカメラマンの横田さんは、ピラカンサの花を見逃すことなくちゃんと撮影していました。しかも、ガーデナーさんに名前まで教えてもらっていて、これはトキワサンザシだそうです。栽培の難易度
耐寒性・耐暑性ともに強く、丈夫で育てやすい低木です。日当たりがよい場所で、水はけのよい土壌を好みます。苗木を植えつける際に元肥を施せば、追肥の必要はありません。翌年以降は2月〜3月に緩効性肥料を施します。地植えの場合は、水やりは雨まかせでかまいません。11月に花芽ができるので、剪定は開花後9月までに行います。枯れ枝や伸びすぎた枝をカットします。徒長枝は途中で切ると、そこから枝分かれして伸びてきて、株が込み合ってしまうため、必ず根元から切るようにします。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。