365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> ナツヅタ
蔦紅葉とも称賛されるほど美しいナツヅタの紅葉。真っ赤に染まる葉が連なる様子は本当に素敵です。■属科・タイプ:ブドウ科のつる性植物
■観賞期:10月〜12月
■草丈:~10m(つるの長さ)
美しい蔦紅葉(つたもみじ)を楽しめるのはナツヅタです
昔からツタの絡まる家や壁が大好きで、物語の舞台になりそうなロマンチックな雰囲気やミステリアスな雰囲気を感じ、うっとり眺めてしまいます。なかには秋に真っ赤に紅葉するツタもあり、これが今回ご紹介するナツヅタです。
ツタといえば、アイビーとも呼ばれるヘデラを思い浮かべる方も多いと思いますが、ヘデラはウコギ科キヅタ属のつる性植物。フユヅタとも呼ばれるキヅタもヘデラの仲間で、常緑性で紅葉しません。混同しがちなので、お間違えのないように。
ナツヅタと同属に北米原産のアメリカヅタがあり、ヴァージニアヅタの名前でも出回りますが、こちらも紅葉後に落葉します。アメリカヅタは葉が5裂で、葉の縁に浅い切れ込みがあります。ナツヅタは基本的には3裂で、なかにはハート型や1〜2裂も交じります。実際に葉を見れば、ひと目で違いがわかるので、アップで観察してみてください。
さて、私が大好きな「ツタの絡まる家」ですが、ツタの気根が家の外壁のすき間にくい込んで外壁を傷めるともいわれます。気根を出して広がるのはキヅタで、ナツヅタは茎か巻きひげを出し、壁などに吸着して広がります。外壁をツタが覆うことで、冷暖房の効率がよくなるそうで、夏にはグリーンカーテンとして日差しを遮る効果も得られます。
ツタなどのつる性植物を利用した壁面緑化には、助成金制度が設けられている市町村もあります。ちなみに東京都目黒区を例に挙げると、建物の壁面1㎡以上を新たにつる性植物などで緑化したものを助成の対象としています。壁面緑化をお考えの際は、お住まいのエリアの助成制度を確認してみてください。
葉の先まで赤く染まったナツヅタ。1枚いただいて押し葉にして保存しておきたくなります。ナツヅタは葉に3つの切れ込みが入るのが特徴です。全体に丸みのある形で、アメリカヅタより優しい印象を受けます。栽培の難易度
日当たり・風通しのよい場所を好みますが、明るい日陰でも育ちます。植えつけ時に元肥を施せば、追肥の必要はありません。植えつけ時にたっぷり水やりすれば、あとは雨まかせでかまいません。生育力が旺盛で、どんどんつるを伸ばすので、這わせたくないほうに進んだつるは切り取ります。地面を這って広がるつるも同様に剪定します。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。