365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> サザンカ
カンツバキ群の肥後サザンカ‘不二の雪’。熊本には幕末期に京都から持ち込まれたとされる40種に及ぶサザンカが継承され、「肥後サザンカ」と呼ばれて親しまれています。■属科・タイプ:ツバキ科の常緑中高木
■花期:10月〜4月
世界に誇れる美しさの日本固有種です
サザンカが咲き始めていますが、お気づきでしょうか。「あそこで咲いているのはサザンカ?それともツバキ?」と迷う方も多くいらっしゃると思います。どちらもツバキ科ツバキ属で、花形も花色もよく似ていますものね。
サザンカの学名は
Camellia sasanqua(カメリア・サザンカ)、ツバキは
Camellia japonica(カメリア・ジャポニカ)。サザンカは日本の固有種、つまり日本にしか自生していない花木で、ツバキは日本に多く自生するため、学名にジャポニカとつけられてはいますが、台湾や朝鮮半島、中国の一部も原産地とされています。
サザンカが咲き始めるのは10月からで、ツバキが咲き始めるのは11月中旬以降。となると、このタイミングで花をたくさん咲かせているのはサザンカの可能性が高いといえます。どちらも種類が豊富にあるため園芸品種群に分けられ、それによって花期が異なります。
サザンカの場合は、サザンカ群(10月~12月)、カンツバキ群(11月~翌年3月)、ハルサザンカ群(12月~翌年4月)、タゴトノツキ群(11月~12月)と4つの群があります。さまざまな品種が春までリレー咲きするため、開花時期でこれはサザンカと推測できるのは、今が最後ではないかと思います。
咲き始めの時期で違いがわからない場合は、花の散り方を観察してみてください。サザンカは花びらが1枚ずつ独立しているので、ハラハラと花弁がばらけて散ります。一方、ツバキは花弁が根元でつながり筒型になっているため、散る際には花ごとぽとりと落ちます。
サザンカとツバキの交配品種もあるため例外もありますが、だいたいこれで見分けがつくと思います。サザンカもツバキもこれから春まで花散歩でたくさん出会えるので、サザンカ、それともツバキ?とそのたびに浮かぶ疑問の答えを今年はぜひ見つけてください。
サザンカというとピンクの花を思い浮かべる方が多いと思います。これはカンツバキ群の‘伊豆立寒’で、立性で樹姿が美しいのも魅力です。栽培の難易度
日なた、または明るい日陰で栽培します。耐陰性があるので日陰でも栽培できますが、多少花つきが悪くなります。植えつけ時に元肥を施せば、追肥の必要はありません。翌年以降は、開花後に株元に緩効性肥料をまきます。植えつけ時にたっぷり水やりし、その後は雨が降らずに土がからからに乾いたらたっぷり与えます。剪定は花後に行います。枯れた枝を取り除き、込み合っている箇所は弱そうな枝を選んで切り戻します。9月には花芽が膨らんでくるので、そのタイミングで花芽がつかない枝を間引いてもかまいません。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。