卵巣がんの約10〜15%は遺伝的な要因が強く関与しています。本人だけでなく親子、姉妹にもかかわるため、体制が整備された専門施設での相談をおすすめします。
日本婦人科腫瘍学会 常務理事
東海大学医学部 産婦人科教授
三上幹男さん1984年慶應義塾大学医学部卒業。
2006年より東海大学医学部産婦人科教授。
16年日本婦人科腫瘍学会ガイドライン委員会委員長に就任。
【遺伝性乳がん卵巣がん症候群】
近年、がんの発症メカニズムに特定の遺伝子が関与していることが明らかになり、遺伝するがんも存在することが判明しています。
「卵巣がんの一部にもそういった種類があり、全体の約10〜15%は遺伝的な要因が強く関与して発症していると考えられています」と日本婦人科腫瘍学会常務理事でガイドライン委員会委員長の三上幹男さんは説明します。
その1つとして注目されているのが「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」です。2013年にハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんがHBOCであることを公表し、日本でもよく知られるようになりました。
この原因遺伝子では
BRCA1 と
BRCA2 が有名です。「この2つの遺伝子は、いずれもDNAの修復に不可欠だと考えられているものです。生まれつき変異があるとそれが原因となって乳がんや卵巣がんを高いリスクで発症するといわれています」。
HBOCの研究団体である「NPO法人日本HBOCコンソーシアム」が作成した資料によると、生涯で卵巣がんにかかる可能性は、一般の人を1倍とした場合、卵巣がんの家族歴がある人で3〜10倍、HBOCでは8〜60倍リスクが高まります(下・表参照)。
* 国立がん研究センターがん情報サービス『がん登録・統計』2015年4月更新
** 公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計’12」
*** King MC et al.Science 302(5645):643-646,2003
参考資料/『遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)をご理解いただくために(ver.3)』特定非営利活動法人日本HBOCコンソーシアム
「これらの数字は研究によって違いますので、1つの目安として考えるのがよいでしょう。いずれにせよ、
BRCA1/2 遺伝子に変異のある人は高率に卵巣がんを発症する危険性があります」と三上さんは指摘します。