松岡修造の人生百年時代の“健やかに生きる”を応援する「健康画報」 日本人女性初の宇宙飛行士で、宇宙医学がご専門。現在は東京理科大学スペースシステム創造研究センターで「宇宙滞在技術の高度化とその社会実装」を研究している向井千秋さん。2度の宇宙飛行という稀有な経験から考えた「人間の健康、幸せとは」? よく通る声でエネルギッシュに語り、朗らかに笑う向井さんと、日本一熱い男・松岡さんの“超ポジティブトーク”をお届けします。
前回の記事はこちら>> “地球を抱きかかえるイメージ”のツーショット。風格ある白亜の建物は、向井千秋さんが特任副学長を務める東京理科大学の近代科学資料館です。 (松岡さん)スーツ、シャツ、ネクタイ、ベルト、靴/紳士服コナカ宇宙飛行士、医師・医学博士 向井千秋さん
向井さんの「大きいわね~」という感嘆の声に松岡さんが笑顔で応じ、すぐに打ち解けたお二人。インタビューは2020年にリニューアルオープンした近代科学資料館のサロンで行われました。向井千秋さん(むかい・ちあき)1952年群馬県生まれ。1977年に慶應義塾大学医学部を卒業し、医師免許取得。1988年に同大学大学院博士号取得。同大学医学部外科学教室(心臓血管外科)勤務を経て、日本人女性初の宇宙飛行士として1994年、1998年と2度宇宙飛行を行い、ライフサイエンスおよび宇宙医学分野の実験を実施。その後、国際宇宙大学教授、JAXA 宇宙医学研究室長、宇宙医学センター長を歴任。現在は東京理科大学特任副学長兼スペースシステム創造研究センタースぺース・コロニーユニット長を務める。“宇宙人”千秋さんがお元気な秘密とは?── 松岡さん
「カレンダーイヤーにとらわれないこと。私は永遠の28歳です!」── 向井さん
松岡 千秋さんは宇宙人ですよね。
向井 はい。松岡さんもね。
松岡 僕もですか?
向井 宇宙の中に地球があって日本があって、私たちがいるんですから。子どもたちによく「宇宙人はいますか?」と質問されますが、「私たちが宇宙人よ」と答えています。
松岡 同じ宇宙人でも、千秋さんは僕らには想像もつかない特別な経験をされています。宇宙飛行を通して何を感じられましたか?
宇宙飛行をして気づいた「世の中に“絶対”はない」
向井 一番は「世の中に“絶対”はない」ということですね。押したら押し返されるというニュートンの「作用反作用の法則」のとおり、立っていれば地面が、座っていれば椅子が私たちを押しているのですが、重力がある地球では感じませんよね。でも、自分がふわふわ浮いてしまう宇宙船内では違います。ドアノブを回そうとすれば、自分の体が回っちゃう。
松岡 自分がドアノブに回される!
向井 そういう経験を通して、私が当たり前だと思っていたことは、地球という「重力文化圏」限定だったのだと気づかされました。
松岡 地球の常識が覆される空間で、心身の健康のために気をつけたのはどんなことでしょう?
向井 筋肉が使われないためにどんどん減っていってしまうので、毎日1時間、ランニングマシンやエアロバイク、ゴムを使ったトレーニングをしていました。メンタル面については、同じ釜の飯を食べ、一緒に仕事をする仲間に支えられました。あとは、地球にメールして家族とやり取りするのもストレス解消になりましたね。今は宇宙船から携帯電話がかけられて、しかも隣の部屋にいるのかと思うくらい声がクリアに聞こえるそうですよ。
松岡 それは嬉しいですね。
「口角を上げて『がんばるぞ』と声に出せば前向きに」── 向井さん
松岡 現在も健康のために何かされていますか。
向井 睡眠をきちんととることとジム通いですね。この20年ほど定期的な運動をしていなかったのですが、半年前からジムでヨガなどをしています。
松岡 メンタル面はいかがですか? 千秋さんは落ち込んだりすることがなさそうに見えますが。
向井 私にも、落ち込んで仕事に行きたくないなぁという日はありますよ。でも、玄関を出るときに口角を上げて、「今日も一日がんばるぞ」といえば、脳にスイッチが入って、やる気が出ます。松岡さんも同じようなことをされているんじゃないですか?
松岡 はい! 前向きな言葉を声に出していうのは効果がありますよね。