ポジティブ人生のお手本は97歳のお母さま・ミツさん
松岡 千秋さんのこの前向きさの源は、もちろん人生経験もあるのでしょうが、一番はお母さまのミツさんではないですか?
向井 うちの母はポジティブな人ですからね。この前一緒に電車で座っていたら、近くに母よりは若いけれど杖をついた人が立っていたんですね。そうしたら、母が私に「席を譲ったほうがいいかしら」ってささやいたんです。97歳で、その車両で間違いなく最高齢なのに(笑)。そんなふうに母は常に誰かの役に立ちたいと思って生きているから、若いのかなと思います。
松岡 素敵なお母さまですね。千秋さんはご自身の年齢をどうとらえていらっしゃいますか。
向井 私は永遠の28歳です!(笑) 世間ではカレンダーイヤーにとらわれて、「50代らしく」とか「もう60歳だから」と、自身の考え方や行動を決めている人が多いですよね。でも、私は自分の体が決めてくれればいいと思っているんです。
松岡 年齢でなく、体が決める。
向井 ええ。もし膝が痛くて階段を上るのがつらくなったら、エスカレーターやエレベーターを使う。おなかが出てきたのが気になれば、おなかが隠れる服を選ぶ。そんなふうに体の変化に対応していって、「気づいたら100歳だった」となればいいなぁって。
松岡 社会通念ではなく、自分の体に合わせて生きるということですね。でも、なぜ28歳なんですか?
向井 心身ともにある程度整って、肩の力も抜け、周囲に優しくできるようになり、「私はこの生き方でいこう」と心が決まるのが、20代後半から30代前半じゃないかと思うからです。
「夢を実現させるには応援という追い風が不可欠なんですね」── 松岡さん
松岡 28歳というと、千秋さんは病院に勤務されていた頃でしょうか。その後、新聞で宇宙飛行士募集の記事を見て応募され、見事選ばれて2度も宇宙に行かれた。強運ですね。
向井 その部分だけを見るとそうかもしれませんが、いろいろ失敗もしていますよ。ただ、運とは少し違うかもしれませんが、周りの人にはとても助けられてきました。世界を舞台に活躍されてきた松岡さんのほうがおわかりだと思いますが、人は一人では何もできませんよね? 学生たちに「自分を帆掛け船だと思いなさい。どんなに優れた帆掛け船も風がなければ動かない。風は周りの人が応援してくれることで起きるもの」と話しますが、必死でやっていると、必ず助けてくれる人が現れる。「がんばってね」というひと言だけでも追い風になります。
松岡 確かに周囲の応援は力になります。その風を受けて、地球を見るという夢を実現されたのですね。