「ご近所力」を育むことが暮らしやすい町づくりの第一歩
一方、和夫さんは地域で支え合う仕組みをつくり、認知症になっても大丈夫な町を育んでいくことの必要性を訴え続けていました。
父には徘徊の症状はみられませんでしたが、一人で出かけた先で転倒し動けなくなるなど危ない目に遭っています。また、父がなかなか帰ってこないので、母が心配して捜すこともありました。こんなときに助けられたのがご近所さんです。動けなくなった父を家まで送り届けてくれたり、父がいる場所を母に知らせてくれたりしました。
高齢化がさらに進展する中、お互いに支え合う仕組みをつくり、認知症になっても大丈夫な町にすることが必要です。認知症の人が暮らしやすい町は誰にとっても住みやすいでしょう。──和夫さん
こうした「ご近所力」をそれぞれの地域でどう育んでいくのか。超高齢社会に生きる私たちには問われています。精神科医の森川すいめいさんが自殺希少地域について記した書物を読むと、その地域は人間関係が親密というわけではないけれど、お互いになんとなく知っていてちょっとした声かけが多いのだそうです。こんな町は認知症の人にとってもいい場所なのではないかと思います。
「書物から知識を得ることで認知症の人の行動を理解できるようになり、心にゆとりが生まれて介護する際に上手に距離が取れるようになります」と洋さんはアドバイスする。 撮影/八田政玄 取材・文/渡辺千鶴
『家庭画報』2022年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。