漢方の知恵と養生ですこやかに 第10回(01) 気候は過ごしやすく食欲も旺盛。行楽、芸術と楽しみ満載の10月ですが、気をつけたいのはホルモンの変調に伴う「血」の滞りと更年期症状。血液の材料となる食べ物の摂り方が、調子のよしあしを左右します。食欲の秋に食養生の大切さを、根本先生が丁寧に教えてくださいました。
前回の記事はこちら>> 秋の抜け毛、シミ、イライラの原因は「瘀血(おけつ)」
「血」を巡らせて更年期症状を和らげる
〔解説してくださるかた〕横浜薬科大学客員教授・薬学博士 漢方平和堂薬局店主 根本幸夫先生1947年生まれ。1969年東京理科大学薬学部と東洋鍼灸専門学校を同時に卒業後、さらに鍼灸と中国医学を学ぶ。「普段の生活こそが治療の場」をモットーに、漢方平和堂薬局(東京都大田区)では多くの人々の健康相談にのり、養生法をベースに漢方薬処方を行う。(社)日本漢方連盟理事長。前・横浜薬科大学漢方和漢薬調査研究センター長。著書多数。体も髪も“衣替え”の季節。秋は抜け毛が多くなる
五穀豊穣の秋は穀物の香りが人々に幸せを運ぶ季節(「香」という字の「禾」は穀物を表します)。夏の疲れも抜けて胃腸の調子も戻り、まさに食欲の秋本番です。
この時期、服装が変わるように体の中のホルモンも変調し、夏仕様から秋冬仕様へと“衣替え”。犬や猫の毛が生え替わるのと同じく人間も抜け毛が多くなります。ある程度は自然現象なのですが、食生活が悪いと抜け毛や白髪が急に増えてきます。
これには漢方の基本的理論である「気血水(きけつすい)」の中の「血」が大きく関係しています。
血は体の中の血液成分全部をさし、「気」(生命力、エネルギー)や「水」(体内の血液以外の水分)を巡らす働きをしています。新鮮な血液が体内に行き渡り、古い血と入れ替わることで細胞は活性化しますが、血液が汚れていたり、ドロッとしてスムーズな流れが滞ると新陳代謝が悪くなり、体の各部に十分な栄養が届きません。
この状態が「瘀血(おけつ)」で、さまざまな不調の原因となります。ちなみに漢方では毛髪を「血余(けつよ)」といいます。全身を巡る血の余りが髪をつくるので、髪の健康に血の質と量が深くかかわると考えます。