室町幕府三代将軍、足利義満により創建された京都・相国寺。承天閣美術館は、相国寺および同寺を本山とする鹿苑寺金閣、慈照寺銀閣などの塔頭に伝来する宝物を展示する美術館だ。
国宝《無学祖元墨蹟 与長楽寺一翁偈語》(むがくそげんぼくせき ちょうらくじいちおうにあたうるのげご)四幅のうち二幅 紙本墨書 鎌倉時代 13世紀 相国寺蔵 ※I期《足利義政像》(あしかがよしまさぞう)一幅 室町時代 絹本著色 慈照院蔵 ※初公開/I期ルーツである足利将軍の遺品や寺宝を広く紹介する本展の見どころを、学芸員の本多潤子さんに伺った。
「寺宝は、その寺がどのような歴史に立脚しているのかを示しています。権力者の庇護なしには、伽藍運営は成り立ちません。そのため、寺宝は単なる“美術品”ではなく、時代ごとの“武家政権”と“寺”の関係を示す歴史的な証言者でもあるのです。義満は中国の明との貿易を開始し、その交渉にあたったのが、中国で禅を学んだ僧たちでした。これら舶来の美術品の多くが現在、国宝や重要文化財に指定されています。当時の足利将軍家の美術品に対する価値観が、現在の文化行政の価値観に影響を与えているのは興味深いことです。今回の展示では、足利将軍の肖像画を一挙に展示します。こちらが一番の見どころですね」
お寺の美術館ならではの、特別な展示が見られそうだ。
重要文化財《鳴鶴図》文正筆(左幅)(めいかくず ぶんせいひつ)双幅 明時代 絹本著色 相国寺蔵 ※I期 重要文化財《鳴鶴図》文正筆(右幅)(めいかくず ぶんせいひつ)双幅 明時代 絹本著色 相国寺蔵 ※I期「当館は、京都御所の北に位置する相国寺の境内に建っています。文化財を、何百年も守り伝えてきたその地で見るという体験は、なかなかできることではないと思います。作品とともに守り伝えてきた人々の想いも感じていただけましたら幸いです」
武家政権の軌跡 ―権力者と寺
相国寺承天閣美術館I期:〜2022年10月6日まで、Ⅱ期:2022年10月16日~12月11日
休館日:2022年10月7日~10月15日
開館時間:10時~17時
観覧料:一般800円
TEL:075(241)0423
URL:
http://www.shokoku-ji.jp/ 表示価格はすべて税込みです。
構成・文/安藤菜穂子
『家庭画報』2022年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。