母から娘へ── 受け継がれる「美」の秘密 第2回(全3回) 家庭画報本誌を愛してくださるかたがたには、キラキラとした輝きを放っている女性がたくさんいらっしゃいます。今回はその中から、「宗家 源 吉兆庵」の岡田家、「華都(シャトー)飯店」の馬家、「荒川化学工業」創業家の荒川家の母娘3組がご登場。受け継がれる健やかな美しさの秘密を教えていただきました。
前回の記事はこちら>> 家族で囲む“食卓”が健康をつくる
母・馬へれんさん、娘・馬衣真さん
家族の系譜●中国ハルビン生まれの祖母・馬遅伯昌さんは、戦後夫とともに来日し、1965年に「華都飯店」を開店。母・馬へれんさんは伯昌さんから料理の基礎を学び料理研究家に。娘・馬衣真さんも料理の道に進み、三田から六本木に移転して10年になる華都飯店の経営をへれんさんから受け継ぎました。知恵が飛び交う食卓で学んだ食の楽しさ大切さ
食はおいしく楽しく大勢で。祖母・馬遅伯昌(マーチーハクショウ)さんが先代から受け継ぎ、母のへれんさん、娘の衣真さんへとつないだ馬家の食の伝統です。
円卓に家族が揃うと、大人たちはテーブルいっぱいに並ぶ料理を味わい、目を輝かせ食談議を始めます。
「黒い食べ物は髪の毛にいいのよ。今日は顔色が悪いからほうれん草を食べなさい」──。
活気溢れる食卓で語られる知恵のシャワーを浴びながら、子どもたちは「おいしいね」といいながら楽しく食べることの大切さを自然に学んだといいます。母も娘も料理の道に進んだのは当然の成り行きだったかもしれません。
代々の家族写真が日常を見守る。手前の一枚は曽孫を抱く祖母・伯昌さん(106歳を目前に2021年逝去)を中心に親子4代で。「家族が喜びを分かち合うために食卓がある。祖母と母から自然と教わったことです」── 娘・衣真さん
へれんさんは、家族が喜ぶ楽しい料理を手際よく作り、料理家の仕事と子育てを両立してきました。
「家族の体調に真っ先に気づいて食で整えてあげられるのは母親。だからどんなに忙しくても精一杯心を込めて、私なりの工夫も加えて料理を作りました。母(伯昌さん)の正統派の酢豚や炒飯にフルーツやトマトなど目新しい食材を足すと、見た目も華やかで子どももわくわくする一品になるのよ」と話します。
国立北京中医薬大学日本校で薬膳を学び、国際中医薬膳師の資格を持つ衣真さん。祖母が始めた料理教室を続け、華都飯店の経営も担う多忙な日々の中で、祖母の言葉をよく思い出すといいます。
「たとえば『皮膚がカサカサなのは体の中が乾燥しきっているからよ。大根や蓮根を食べなさい』と。これらの食材には体を潤す作用があって、本当に肌のハリや美しさが戻ってくるのです。長年受け継がれてきた食の知恵が、理論的にも正しい“本物”なんだと知って驚くばかりです」
心身の“美”
馬家に伝わる薬膳スープは女性に優しい飲むサプリメント
「食べ物で体の中から美しくなる」が馬家の美の基本です。上の写真は代々伝わる鶏のスープに女性の体を整える生薬(党参、松の実、枸杞、麦門冬、棗)を加えた薬膳スープ(奥)。胃腸が疲れているときはスープだけで栄養が摂れ、旬の野菜を合わせた「かぼちゃのポタージュ」(手前)などのアレンジも。
へれんさんは伯昌さん直伝の酢大豆や生薬を煮つめて固めたハーブペーストを日々のサプリメント代わりに。スプーン1杯の黒ごまは衣真さんの黒髪と爪を健康に保ちます。
衣真さんの食器棚には、伯昌さんから譲り受けた中国の骨董品と、お茶を愛するご主人が集めた器が並びます。