さて、手元に届いた2つのブランドのクリームなどを見ながら考えた。アンティーム オーガニックは容器のデザインが可愛くていかにもフェミニンだ。ワフィトは無地でモダンな印象。とにかく手に取りやすいアンティーム オーガニックをミエさんに送った。
ちなみにアンティーム オーガニックのデリケートゾーン用のリキッドソープは2000円、同じくローションは3000円、クリームは2600円である。これに消費税はつくけれど、熟年世代には買いやすい値段だ。どんな和漢植物エキスを配合したものかも詳しく説明書に書いてあり、なんとなく信頼できる。なぜなら、私は何度か顔用の基礎化粧品で失敗した経験があるからだ。友人に薦められて、ものすごく有名で高価な化粧品を揃えたのだが、肌にまったく合わなかった。顔が赤く腫れてしまい、夫からまで「何だ、そのぶちゃむくれの顔」と指をさして笑われた。
ミエさんの住所に宅配便で送って2週間ほどしたところで、電話をした。効果を聞いてみたのだ。その間に私はワフィトを試したかったのだが、コロナ疑惑で寝込んでしまい、膣まわりどころか歯も磨けない最悪な状態だった。今、考えると感染症ノイローゼだったのだろう。それにミエさんほど切迫した需要がないのだから仕方がない。実際にはコロナではなくて、単に喉が痛くて熱が出ただけだった。つまり普通の風邪。しかし、正直に言うと、やっぱり膣のケアは健康で気持ちの余裕がなければ始められないと思い知った。ある意味では熟年の恋愛もそうだろう。衣食足りての礼節であり、大人のデリケートケアなわけだ。
(後編に続く)
工藤美代子(くどう・みよこ)ノンフィクション作家。チェコのカレル大学を経てカナダのコロンビア・カレッジを卒業。1991年『工藤写真館の昭和』で講談社ノンフィクション賞を受賞。著書に『快楽』『われ巣鴨に出頭せず――近衛文麿と天皇』『女性皇族の結婚とは何か』など多数。
イラスト/大嶋さち子
『家庭画報』2022年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。