“かには産地で”を身に染みて感じる、松葉かに尽くしの幸せすぎる夜
奉書に杉の皮を重ねてかにを包んで蒸しあげる「活蟹の奉納蒸し」の調理前。足についた青いタグが「隠岐の島」産の証。豪快な姿に、気分は俄然盛り上がる。今回のお目当ては、もちろん「活蟹尽くし 蟹会席」。しかも「タグ付き」の松葉がにと聞けば、ますます期待は高まります。松葉がにの漁は11月上旬から3月上旬まで。海の宝ともいえる松葉がにの品質などを守るため、当地ではブランド認定が行われています。その認定の証がタグ。
ちなみに青いタグは隠岐の島で揚がったもの、そして赤いタグは境港のものだとか。今回のタグは青。「“隠岐松葉”ですね。起伏の多い隠岐の島は海流に勢いがあり、プランクトンも豊富。漁獲される松葉がにも良質な味わいといわれています」(マネージャー・立山 淳さん)。
しかも隠岐では籠を使ってかにを取るスタイルが主流。「かにからしてみると、籠に入って眠っていたら、朝市場で売られていたという状態でしょうか(笑)。実はかには繊細な生き物で、ストレスを感じるとかにみその風味や色が格段に落ちてしまうんです。起きたばかりだから(笑)ノンストレスで鮮度もばっちり! 一口召し上がれば、かには産地でという言葉を実感されると思いますよ」。
ディナー前のプロローグとして、まずは「活蟹の奉納蒸し」の調理前の姿でお目見えします。お、おおきい……、そして美しい。「今回のコースではお2人で松葉がに3杯をお楽しみいただきます」。そんな贅沢な……と思う間もなく、ディナーはスタート。
始まりは「活け蟹と寒ぶりのお刺身」。うっかりかにに気を取られがちだが、脂ののった寒ぶりもこの季節ならではの美味しさ。「蟹刺身」をつるり、といただきびっくり。なんでしょう、このみずみずしさ。そして口の中で立体的に広がる旨味。今まで自分が食べてきたかには、かにではなかったのでは??という疑念も心をよぎります(笑)。
「焼き蟹」は腕とはさみ、そして甲羅と味噌がメイン。酢橘を搾って、シンプルにいただく。 繊維のすみずみにまでじんわりと美味しさが行き渡った「焼き蟹」、煮切り酒を注いで焼いた甲羅焼きも海のグラタンのような、優しくも濃厚な味わい。「蒸しがには、一瞬置いてからのほうが旨味が増しますよ」とのアドバイスを受けるものの、かにから立つ湯気がすでに香ばしく、箸をつけるのを抑えることができません。
締めくくりは「蟹すき鍋」。宍道湖の近くらしく鍋に入れられたしじみもまた、アクセントを与えてくれます。一品一品が至福。そして確かに「かには産地で」を実感。口福の余韻が長く長く残ります。明日の朝、起きたらかにに変身していたらどうしようと思いつつ(笑)、かに尽くしのディナーはフィナーレを迎えるのでした。
「かにを焼くときは、切れ目を入れた側から焼きます。表面に膜を作ったらひっくり返すと、蒸し焼きのような状態に」(立山さん) 勾玉模様をモチーフにしたオリジナルの石州瓦の鍋で「活蟹としじみの蟹すき鍋」を。締めくくりはもちろん蟹雑炊。「活蟹つくし蟹会席」 1名47,000円~(2名1室利用時、税・サービス料別)。