巨匠の曽孫ソフィー・ルノワールさんのパリ生活 ルノワール家が紡ぐ芸術の遺伝子 最終回(全2回) パリに暮らすソフィー・ルノワールさんは、印象派の巨匠ルノワールの曽孫にあたります。自らも俳優、写真家として多彩に活動する彼女が語る、創造の才に恵まれたルノワール家の系譜を、特別取材でご紹介します。
前回の記事はこちら>> 「光とその効果に惹かれるのは家族から譲り受けた感性」
バラや芍薬、野花を愛し、麗しい花を見るとすぐにカメラを向けて。光や光の反射、空、風、自然の一瞬をカメラに
2022年10月に、東京銀座のギャラリーで日本では初めてとなる写真展を開催するソフィーさん。
「私が写真に興味を持ったのは、身の回りにある光と、その光が生み出す素晴らしい効果に惹かれたからです。両親がカメラを使っている姿をよく見ていたので、その影響があるのかもしれません。私は興味を持った光や光の反射、空、風など、自然界に存在するものや色などを撮影するのです」。
気に入ったものに出会うと、撮影に没頭していく姿は、ルノワールが絵を描くときの様子を彷彿させます。
ルノワールは「画家はどれだけ素晴らしいパレットを持っていても意味がない。大事なのは、どんな眼を持っているかなんだ」という言葉を遺していますが、まさにその言葉を体現するソフィーさんの表現方法に、ルノワール家の血筋を感じます。
『ピクニック』や『007/私を愛したスパイ』、『ミステリアス・ピカソ 天才の秘密』など多数の有名映画の撮影監督であった父にいわれたのは、「見るための時間をとりなさい」という言葉だったそう。「父が携わった映画はほとんど見ています。父の仕事の縁で親しくなったアーティストのファミリーもいるんですよ」。
今年ニューヨークのナッソー郡美術館でも作品を出展。現像所で日本の写真展に向けて、エージェントの片岡ちがやさんと写真のチェック。自分の周りのすべてが刺激的な出来事
映画監督である大叔父のジャン・ルノワールについては、「幼い私を散歩に連れて行ってくれたりと親のようなところがありました。会わない時期もありましたが、私が14歳のときに、ロサンゼルスで再会。大叔父は高齢になっていたので、俳優になった私を撮影する仕事ができないことを残念がっていました」。
ソフィーさんに備わる芸術的な素養は、曽祖父ルノワールや大叔父ジャン、両親によって培われ、精神的な遺産として自然に引き継がれてきたのかもしれません。長い間映画や演劇の世界に身を置き、多くの俳優と接し、写真は趣味として撮っていたソフィーさん。そうして約20年間写真を撮り続けるうちに、作品のコンセプトやイメージが自身の中で熟成され、今、次のステップに踏み出そうとしています。
ソフィーさんの感覚は繊細で自由。緻密に計算された特殊効果などとは無縁ですが、彼女を取り囲むものそのものが常に彼女を刺激しているといいます。「日本での初写真展では、『Regards(視線)』というテーマで作品を発表します。私の視線で見たものを、皆さまの視線で感じ取っていただき、分かち合えたらと思っています」。
出展予定の作品から、「シェイプ・オブ・ウォーター」。プールの底の模様が織り成す光の輝きがもたらしたもの。©Sophie Renoir「エッセンシャル」。劇場の赤いベルベットの座席。俳優でもあるソフィーさんの物語性が感じられる。©Sophie Renoir「ココ、カメリア」。ソフィーさんの好きなシャネルのカメリア。ココへのリスペクトを込めて。©Sophie Renoir ソフィー・ルノワールさん写真家として来日
銀座のギャラリーにて最新作を集めた日本初の写真展を開催ソフィー・ルノワールさんが長年撮りためてきた写真の数々。その中からソフィーさんが自身の視線を通して感性を揺さぶられた作品を「Regards(視線)- ソフィー・ルノワール写真展」と題して、日本で初披露。多くの美術作品に囲まれ、映画や演劇の世界に親しんできた彼女ならではの繊細で自由な視線が感じられる作品を展示。また、「ハイアット セントリック銀座東京」にて、人と人との繫がりをテーマにした作品「心/KOKORO」も同時発表。
会期:2022年10月11日(火)~29日(土)
会場:emmy art+(エミー アート プラス)
東京都中央区銀座6-3-2 ギャラリーセンタービル2階
TEL:03(6264)5530
chigaya@ckg-fineart.com
https://emmyart.jp入場時間: 12時~19時(火曜~金曜)、12時~18時(土曜)
入場無料
休館日:日曜、月曜、祝日
主催:CKG Fine Art Tokyo emmy art +
撮影/小野祐次 取材・文/粟野真理子 ヘア&メイク/御幸 剛
『家庭画報』2022年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。