365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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11月中旬にビワの花が咲いているのを見つけました。蕾がたくさんあるので、まだこれから咲きそう。鼻を近づけるより前から濃厚な香りが漂っていました。■属科・タイプ:バラ科の常緑高木
■花期:11月中旬〜2月上旬
花はバニラのような香りってご存じでしたか?
庭にビワの木があり、ご近所にも数本あったので、子どもの頃からビワは身近な果樹でした。そのため、どこでも簡単に育つ果樹という認識がありましたが、ビワは耐寒性がやや弱く、最低気温が−2〜−3℃以下になる地域での栽培は難しく、関東の温暖地以西が栽培地となるそうです。ためしに、東北生まれの知人に「ビワの栽培しているお宅はあった?」と尋ねてみたところ、「ビワの木は東京に来て初めて見た」との返事。なるほどなーと納得しました。
ビワが家庭果樹として栽培され始めたのは江戸時代の末期からですが、もともと日本にも自生していて、奈良・平安時代には野生のビワを採取して食用として利用していたそうです。ちなみに現在、家庭果樹として利用されているのは、日本に自生していたものではなく、中国から導入した果実の大きな唐ビワから品種改良されたものです。
さて、ビワが収穫できるのは6月ですが、花が咲くのは11月中旬〜2月上旬。おいしい果実が収穫できるだけでなく、冬季に花を咲かせてくれる貴重な木です。ただ、大きな葉に隠れるように小さな白花が咲くので、気づかない方も多いと思います。あそこのお宅にビワの木があったな、と思い当たったらぜひ花期に再訪し、可能であれば、鼻を近づけてみてください。白い花から漂うのは、ビワの実の味からはまったく想像できない、バニラに少し似た濃厚な香り! これは何かトロピカルフルーツの木か?と思うような衝撃的な香りをぜひ実感してみてください。
ビワの実の収穫は6月頃。全体が淡いオレンジ色に染まったら収穫適期です。栽培の難易度
病害虫に強く、無農薬で栽培ができること、また、栽培に適した温暖地であれば、剪定など管理の手間がそれほどかからないことから、家庭果樹として広く普及しています。日当たり・風通し共によい場所に植えつけます。植えつけ時に元肥を施せば、その後に追肥は必要ありません。翌年以降は、2月に有機質肥料を施します。剪定は8月〜9月に行います。ビワは枝が多くて込みやすいので、密生している枝や徒長枝を切り落とします。枝を下垂させるように誘引すれば、樹高を低く抑えられます。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。