365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> アベリア
個人邸のレイズドベッド(立ち上げ花壇)に植えられているアベリア。斑入りの葉が外周りを明るく彩ります。剪定でコンパクトにできるので、小さなスペースにも植えることができます。■属科・タイプ:スイカズラ科の常緑低木(寒冷地では落葉)
■観賞期:通年 花期:5月〜10月
強健な性質だけどかわいらしい! 人気が高いのも納得
昨日に続き、建物周りの植栽でよく見かける低木を紹介します。今回ピックアップしたのはアベリア。この低木は、個人邸やマンションの外周りの植栽だけでなく、公園や道路沿いなどにもよく植えられているので、気をつけていれば必ず見つけられますが、名前をご存じない方も多いのではないかと思います。
アベリアの和名はツクバネウツギ。日本の他、中国やヒマラヤ付近、メキシコなどに野生種が見られ、その野生種の種間雑種が現在出回っているアベリアだとされています。小さな葉が密につき、放任すると2m弱の高さになりますが、剪定で1m足らずに調整ができるので、幅広い用途に対応できるのが魅力です。
しかも葉色も何種類かあるので、建物に合わせて好みの色を選ぶこともできます。耐寒性・耐暑性共に強く、丈夫で育てやすく、管理の手間が少なくてすみ、これほど扱いやすい低木はなかなか見当たらないと思います。
アベリアの魅力はそれだけではありません。かわいらしい白、またはピンクの花が長く咲き続けるのです。地域によって差があるので、一応、データには5月〜10月と記しましたが、四季咲き性なので、開花に適した気温がキープできれば一年中開花します。私が暮らすエリアでは、冬の間もぽつぽつと咲いていて、何だかいつ見ても花が咲いている状態です。
植える場所を選ばないのもアベリアの長所ですが、交通量が多い道路沿いに植えられているのを見ると少しかわいそうになります。しかしこれにも理由があり、アベリアは排気ガスにも強い性質なのです。
さらに潮風にも強いので海岸近くの植栽にも利用可能。どこまで利用範囲が広いことか、とアベリアの強健さには驚くばかりです。
クリーム色から黄緑色の縁取りが入る‘ホープレイズ’という品種。かわいらしい白花が長く咲き続けます。萌芽力が強い品種なので、刈り込みにも耐えます。栽培の難易度
日当たりのよい場所を好みますが、明るい日陰でも育ちます。土壌は選ばないものの、長く楽しむには水はけのよい場所に植えるのが基本です。植えつけ時に元肥を施せば、その後の追肥は必要なく、水やりも植えつけ時以外は雨まかせでかまいません。翌年以降は2月〜3月に緩効性肥料を施します。生育旺盛で成長が早いので、樹形が乱れたり、サイズが大きくなりすぎたら2月〜3月に剪定を行います。枯れ枝を取り除き、伸びすぎた枝を落とし、込み合っている箇所を間引くようにします。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。