〔解説してくださるかた〕副島京子(そえじま・きょうこ)先生杏林大学医学部 循環器内科 教授。1989年慶應義塾大学医学部卒業。1993年同大学医学部助手(内科学)、1996年同大学病院救急部助手を経て、1998年米国ハーバード大学医学部に臨床留学し、多数の不整脈の治療にかかわる。2003年同大学助教授、2008年マイアミ大学准教授、2009年聖マリアンナ医科大学循環器科講師を歴任。2011年杏林大学医学部准教授、2015年から現職。心拍のリズムの異常が脈を不安定にする
心臓は左右2つずつの心房と心室が規則正しく収縮することで、全身に血液を送り出します。その収縮は安静時には1分間に60〜100回、1日に約10万回です。心拍数と手足の動脈で触れる拍動(脈拍)は原則として同じです。
不整脈は、この心臓の収縮のリズムが異常になったものです。心臓のリズムが異常になることで、脈拍が頻回になったり(頻脈)、ゆっくりになったり(徐脈)、リズムが一定でなくなったりします。
医学的には、1分間に100回を超えた心拍数を頻脈、1分間に50回未満を徐脈と区別しています。さらに、不整脈は、心臓のどこに問題があるか、あるいは重症度などによって細かく分類されています。
杏林大学医学部循環器内科教授の副島京子先生は「動悸やめまいなどの症状があって、あるいはほかの病気の診察で不整脈の疑いを指摘されて受診する人もいますが、自覚症状がない場合も多く、見つかりにくいのです」と話します。
不整脈の発見には、心電図が必須です。心臓は電気信号で動いているため、心電図ではその電気信号の伝わり方を調べます。心拍が正常であれば同じ波形が繰り返されます。一方、不整脈があると波形が乱れます。
健康診断や人間ドックでチェックしているから大丈夫と思っているかもしれませんが、「健康診断などでは20秒ほどの時間しか測定しません。そのタイミングで不整脈が起こらなければ見逃してしまうことになります」。自分で見つけるには脈を測る、ウェアラブルデバイスを使うなどの方法があります(下のコラム参照)。
ウェアラブルデバイスが不整脈の発見に役立つ
副島先生は、不整脈の予防や早期発見のため、あるいは治療効果を自覚するために、「ふだんから自分の心身に注意を向けていただきたいですね。そのためには自身で脈や血圧を測ったり、ウェアラブルデバイスを使ったりするのがおすすめです」と語ります。
脈を自分で測るなら、①手首の親指のつけ根の部分に反対側の手の人差し指、中指、薬指を揃えて当てる、②安静にして、1分間の脈拍を数え、リズムが一定かどうかを確かめる、という方法で、毎日続けてみましょう。
「多くのウェアラブルデバイスは脈拍を自動計測しますし、種類によっては心電図を取れるものもあります。脈拍の異常を検知できる血圧計も市販されています。長く記録をつけておいてもらえば、私たち医師も診断や治療効果の確認の際に参考にすることができます」