365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> シマトネリコ
タネを含んだ実がなる秋の様子を木の下からのぞき込んで撮影しました。さやのようなスマートな実と葉が風に揺れて心地よい気分に。■属科・タイプ:モクセイ科の常緑高木
■観賞期:通年 花期:5月下旬〜7月上旬
時期によって変わる樹姿を1年中楽しめます
住宅の外周りの植栽に植えるシンボルツリーの人気投票をしたら、上位に入ること間違いなしなのがシマトネリコです。シマトネリコの名を初めて聞いたときには、葉に縞模様の斑が入るトネリコと勘違いしましたが、正しくは原産地である台湾や沖縄島、琉球諸島などの島(シマ)の意味です。
日本原産のトネリコは、昔から田んぼの畦などに植えられ、収穫した稲をかけて干すために利用されたことから、稲架木(ほさぎ)とも呼ばれていました。
そのトネリコは大きな葉をつける落葉樹なのに対し、シマトネリコは厚みのある小さな葉を一年中茂らせる常緑樹です。シンボルツリーには常緑の木が欲しいという方も多く、シマトネリコは定番の人気樹となっています。
シマトネリコがよく利用されるようになったのは、20年くらい前からでしょうか。ご近所で新築の住宅の植栽に苗木が植えられているのをよく見かけました。時を経て立派に育った樹姿を見られるのはうれしく、よそ様のお宅の木ながらなんだか親しみを感じて感慨にふけることもたびたびです。光沢のある厚手の葉が、風に揺れてさらさらと音を立てるのを聞いていると、いつもすがすがしい気分になります。
さて、シマトネリコは季節によって樹姿の表情を変えるのも大きな魅力です。フレッシュな新葉の季節に続き、5月〜6月には淡い緑色から白のふんわりした花穂がたわわにつきます。花後には緑色の花柄が残り、夏〜秋にかけてそれが白いさやのような実になり、また少しふんわりとした様子に。
花も実もそんなに目立たない色ですが、けっこうなボリューム感なので、樹姿の変化にはすぐに気がつきます。ナチュラル感のある上品な色彩で一年中、建物周りを彩ってくれるのですから、シマトネリコの人気が高いのにも大いに納得です。
初夏には繊細な花穂をたくさんつけ、樹姿全体が軽やかにボリュームアップ。ふんわりと優しい印象になります。栽培の難易度
日なたを好みますが、明るい日陰でも育ちます。耐寒性がやや弱く、温暖地・暖地向きの樹種です。植えつけ時に元肥を施せば、その後の追肥は必要なく、水やりも雨まかせでかまいません。翌年以降は2月に株元に緩効性肥料を施します。放任すると樹高が10mくらいまで高くなるので、欲しい高さまで成長したら1月〜2月に剪定して程よい樹高をキープします。枝もよく伸びるので、長すぎる枝は花後に随時切り落としてかまいません。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。