365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> ヒイラギナンテン
濃い緑の葉が黄色みを帯び、徐々に赤く染まってきます。気候状況が適しているとさらに赤く色づきます。メギの仲間には常緑でも紅葉を見せてくれる種類がけっこうあります。■属科・タイプ:メギ科の常緑低木
■花期:3月〜4月 紅葉の時期:11月〜12月
しゃれた紅葉のあとの、花の季節も楽しみ!
縁にノコギリの歯のようなギザギザがある葉を見ると「これはヒイラギ?」と思いがちですが、ヒイラギに似た葉をもつ植物は意外に多く、今回ご紹介するヒイラギナンテンもそのひとつです。
ヒイラギはモクセイ科の常緑中木ですが、よく似た葉のヒイラギナンテンはメギ科の常緑低木。まったく異なる植物です。そしてこの時期、ヒイラギナンテンはとても素敵に紅葉した姿を見せてくれます。ヒイラギは紅葉しないので、葉が色づいていたらヒイラギナンテンの可能性が高いです。日なたながら気温が低めの環境で育つと、色づきやすいといわれています。
さて、ヒイラギナンテンは春に花を咲かせた姿もとても魅力的です。
花期のヒイラギナンテンの迫力ある樹姿をご覧ください。花穂も長く、何本も立ち上がってボリューム感もあります。黄色のころんとした花が連なった長い花穂が何本も立ち上がる様子はダイナミックで見応えがあり、初めて見たときには「こんな花を咲かすのか〜」と驚いた記憶があります。紅葉しているヒイラギナンテンを見つけたら、ぜひ花の時期にもう一度訪ねてみてください。
もうひとつ、ヒイラギナンテンと同属のナリヒラヒイラギナンテンも紹介しましょう。
ナリヒラヒイラギナンテン。11月の様子ですが、黄色の花穂が立ち上がっています。葉形はスマートですが、やはり縁にギザギザがあります。なにしろこちらは今がちょうど花の盛りの時期ですから。旧属名のマホニア・コンフューサの名前で出回ることも多く、個人邸やマンションなどの外周りの植栽にもよく利用されます。ヒイラギナンテンとは葉形がまったく異なり、こちらはシャープな細葉です。ただ、黄色の長い花穂を立ち上げるのはよく似ていて、同属の植物だなと納得。
じつは自宅のエントランスの植栽に、ナリヒラヒイラギナンテンが何株か植わっているのでよく観察できるのですが、少しシルバーがかった緑の葉を背景に黄色の花が咲くと、なかなかしゃれた雰囲気です。何より冬に花を咲かせてくれるのは、植栽が華やかになってありがたいものです。
ヒイラギナンテンもナリヒラヒイラギナンテンも、耐暑性・耐寒性共に強く、丈夫で育てやすく、管理の手間もそれほどかかりません。ローメンテナンスな低木として、ますます需要が増えると思うので、散歩道で見かける機会もけっこう多いと思います。
栽培の難易度
日なたを好みますが、明るい日陰でも育ちます。植えつけ時に元肥を施せば、追肥の必要はありません。翌年以降は、1月〜2月に緩効性肥料を株元に施します。水やりは雨まかせでかまいませんが、夏の高温期に土壌がからからに乾いている場合は、たっぷりと与えます。ヒイラギナンテンは分枝しにくいので、開花後にすべての枝を枝先から1節下で切り戻し、新梢を伸ばすようにすると、きれいな樹姿がキープでき、花穂の本数も多くなります。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。