365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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高性丸葉種のハボタンの間に矮性種のちりめん種を加えた植栽。手前のちりちりが強いハボタンは‘バニー’シリーズで、個性的な姿で人気です。石積みのレイズドベッド(立ち上げ花壇)と敷石の間の狭いスペースも、ハボタンの美しい葉色でしゃれた雰囲気に。■属科・タイプ:アブラナ科の宿根草
■観賞期:11月〜翌年2月
■草丈:20〜80cm
寒さに当たるほど、葉色が鮮やかになります
散歩の途中でハボタンをよく見かける季節になりました。まだ緑色が多いハボタンですが、これから寒さに当たると中心部から葉色が徐々に鮮やかになり、赤や紫、白などの品種がもつ本来の色彩が美しく出るようになります。花ではなく葉。それでも冬の花壇の主役として頼れる存在がハボタンです。
じつはハボタンにはとても多くの品種があるのをご存じでしょうか。葉形で分けると丸葉種、ちりめん種、切り葉種、フリンジ咲きなどがあり、草丈では70〜80cmまで高くなる高性種と、20〜30cmほどの矮性種があります。また、ハボタンといえば少し粉を吹いたようなマットな質感が特徴ですが、最近ではその印象を覆す光沢のある照り葉の品種も登場しています。
品種が豊富なので、他の花を加えずにハボタンだけの花壇にしても美しく、シックでしゃれた雰囲気になります。
さて、気をつけてハボタンを見ていると、直径30cmくらいの大きなサイズから、直径5〜6cmほどのミニサイズまで、ずいぶんとサイズに違いがあることに気づくと思います。でも、大株も小株もじつは品種は同じなんです。
矮化剤で小作りにした丸葉種のミニハボタン。寄せ植えにするとこんなにキュートに!まだ葉色は緑ですが、寒さに当たると中心部に鮮やかな色が出てきます。7月〜8月にタネをまき、芽が出て本葉が出てきたら、少し大きめのポットに植え替えるのですが、これを鉢上げといいます。その際に9cmポットに植え替えて秋を迎えると中くらいのサイズになり、12cmくらいの大きなポットに植え替えると大株に育ちます。
そして、9cmポットに植え替えたタイミングで矮化剤を使うとミニサイズのハボタンに。同じ品種でも大中小と株のサイズが異なると、また違う印象に見えてくるのもハボタンのおもしろいところだと思います。
年を越えた2月くらいまでは節間の詰まったきれいな株姿を楽しめるので、お正月の玄関飾りにハボタンの鉢植えを利用するお宅も多く、散歩の途中でいろいろなハボタンに会えると思います。
栽培の難易度
日なたで水はけのよい土壌に植えつけます。元肥を施せば、追肥の必要はありません。地植えの場合は、水やりは雨まかせでかまいませんが、鉢植えで雨が当たらない場所に置く場合は、表土が乾いたらたっぷりと水やりします。黄色くなった下葉を随時取り除くと、美しい姿がキープできます。気温が上がり始めると節間があき、上のほうの茎がぐっと伸びてきます。その場合は、伸びた茎を切り戻してもかまいません。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。