365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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リボンでラッピングした洋館の前に広がる花壇を、アイスチューリップの華やかな花色が彩ります。クリスマス前に訪ねた神奈川県のガーデンで目にした、季節外れともいえる美しい景色に心が躍りました。■属科・タイプ:ユリ科の秋植え球根
■花期:12月〜翌年1月
■草丈:40〜60cm
冬はもう終わったと勘違いして咲いています
この時期にチューリップが咲いているのを見たら誰でも「あまりに早すぎる!」「狂い咲き?」と思いますよね。ところがあるのです、この時期に咲くチューリップ!咲いているのは草丈が高めで花が大きなトライアンフ系とダーウィンハイブリッド系がほとんどですが、いずれも春に咲くチューリップと同じ品種です。
では、なぜ早く咲くかというと、冷蔵処理をした特別な球根を利用した促成栽培で、これをアイスチューリップ、冷蔵チューリップなどと呼んでいます。
チューリップは春の開花が終わると同時に球根の中に蕾を作ります。そして蕾を抱いたまま夏の休眠期に入ります。蕾はある一定期間低温に当たると、寒い冬が通過したなと認識し、開花の準備にかかります。つまり寒さに当たらないと開花しないということ。
その開花のメカニズムを利用し、冬が来る前に冷蔵し、人為的に寒さに当てることで、開花を早めたのがアイスチューリップです。生産者さんは、6月頃に掘り上げた球根を3〜4か月冷蔵庫で寒さに当て、11月くらいに芽出しポット苗で販売します。ひと手間かかっているので、球根より高価ですが、一足早く春の景色が楽しめるということで、最近ではこの時期からクリスマスにかけてアイスチューリップで景色づくりをする観光ガーデンも増えています。
芽出しポット苗は園芸店でも購入できるので、個人邸で栽培することも可能です。クリスマスやお正月のエントランス飾りにしたら、とても素敵ではないかと思います。わざわざ観光ガーデンに出向かなくても、散歩道でアイスチューリップをもっと見られるようになるとうれしいのですが…。
背後のクリスマスツリーやギフトボックスのディスプレーがなかったら、この時期にチューリップが咲いているとはわからないかも…。チューリップが加わると、クリスマスのディスプレーもみずみずしく新鮮な印象になります。栽培の難易度
すでに芽が出ている苗で市販されているので、そのまま鉢カバーに入れて育てるか、根鉢を崩さないように鉢に植え替える、または地植えにして花を咲かせます。苗の用土にすでに肥料が入っているので、植えつけ時の元肥は必要ありません。やや乾かしぎみに管理するのがよいので、表土が乾いたタイミングで水やりします。芽出し苗の場合、すぐに大きくなって開花までいくため、植え替えはできるだけ早く行うようにします。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。